松下幸之助氏が「美しい経済人」と呼んだ経営者、大原總一郎氏の鮮烈な生きざま!『天あり、命(めい)あり』/江上剛著


倉敷へ行きますと、素晴らしい街並みと共に大原美術館の素晴らしさに驚きます。

と、言いましても私が倉敷を訪ねたのはもう、10年以上前の話ですが、正直言ってあれだけの美術館があの場所にあることに、さらに私立であることに本当に驚きました。

そして、大原美術館を設立した「大原孫三郎」という人物が、あの「クラレ」(の前身・倉敷絹織)創業者である、それくらいのことは初歩情報として知っていましたが、そのあとを継いだ人物「大原總一郎」が、あの過酷な戦中・戦後を乗り切った、まさに「魂の」経営者であることを知ったのは、本書の編集をお手伝いさせていただいたことがきっかけでした。

20160529

私は本書を拝読して、

「ああ、こんな理想を語る経営者の会社なら、ぜひとも働いてみたい」
そう思いました。とにかく、「志」が高い方なのです。

私は以前から、経営者に必要なのは「志」なんじゃないか、と僭越ながら思っております。自分がサラリーマンだったときもいつもそう思っていました。
経営者じゃなくても、上に立つ人、と言ってもいいかもしれません。上に立つ人が志を持てば、各分野のスキルのある人物がそれを支えることもできます。そこさえブレなければ、困難できつい道もどうにか突き進むことができる。そう思うのです。

理想主義者だと、きれいごとと言われてしまうかもしれないけど、どうかやらせてほしい、ついてきてほしい、そういうことを部下にいいながら、誰よりも働き、実現させました。……そして、あっという間に天国へ行ってしまった。

松下幸之助さんが「美しい経済人」と呼んだことの意味が、とてもよくわかります。

そして、なんといっても江上先生。先生の誠実で温かい筆致は、まるで本当に大原總一郎氏がそこで語っているように感じられます。

本書は「経済人ノンフィクションノベル」ですので、経営に興味のある方はもちろんですが、経済に興味がない人もぜひ読んでみてください。

58年の人生を生き切った、一人の「美しい人」の人生を知ることで、何か心にあつい勇気が生まれてくるのではないか、と思います。

(むとう)

終戦のあの時、いったい何が起こっていたのか。「今の日本」の始まりを知るための絶好の一冊、登場!『マッカーサーと日本占領』/半藤一利著


戦後71年目を数える今年。
昨年は70年ということで、新刊のラッシュに加え、『日本の一番長い日』が映画化され、年末には菊池寛賞の受賞と、大忙しだった半藤一利先生。
年が明けて、いよいよこちらの本書も刊行とあいなりました!
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半藤一利先生のご本をお手伝いさせていただいて、なんと三冊目。単行本としては初めてになります。

これまでは、どちらかというとエッセイ的でしたが、今回はかなりずっしりとしたテーマです。
正直言って、「マッカーサー」「日本占領」なんてど真ん中のテーマを、私なんぞで大丈夫かと危ぶみました。しかし、そこは長年ご担当されてきたO編集長がいらっしゃるので、大船に乗った気持ちで、でもコマゴマビビりながらお手伝いさせていただきました。

そんなわけでしっかりずっしりながらも、そこはさすがの半藤先生。とにかく読みやすい&わかりやすい!
「あの時」の、マッカーサーと昭和天皇のやり取りなどから、マッカーサー、昭和天皇がどういう人であったのかを、知ることができますし、
改めてあの敗戦を見てみると、その凄まじさに改めて驚くとともに、その後に起こった様々なことが、本当にすれすれ、紙一重の決断や成り行きによって決まっていったのだ、ということがとてもよくわかり、改めて肝が冷えます。

そして、もう一つ、やはり本書のポイントは、カバーにも使われている「写真」かと思います。(巻頭には写真が24p載ってます!)

カバーのカラー写真、拝見してその状態の良さに驚きました。フィルムの退色がほとんどなく、とても70年前のものとは思えないほどクリアなんです。
だからこそ、この生々しい表現につながるんですね。

何の説明もなくこの写真を見たら、今現在、戦災などでダメージを受けたどちらかの国で撮影されたものと思ってしまうかもしれません。

先生と編集長が、この衝撃的な写真をカバー写真に決められたと教えていただいた時、私は思わずうなってしまいました。
元々は、マッカーサーの顔写真を…なんてお話もあったのですが、それがこちらで決定というのは、ものすごい方向転換とも言えます。

マッカーサーを軸にした本でありながら、この本の主役は被災した名もない日本国民なのではないか。先生はそれを示すためにこのお写真を選ばれたんじゃないか……と、そんな風に想像して、思わずうなったのです。

あの時、日本人はみんな、こうした状況だったんですよね。履くものもなく、着るものもなく、焼け跡になってしまった愛するこの地を呆然と眺める。そんな状況です。

そして、それは、一見遠い風景のようでありながら、決して遠いことではないのですね。
わたしたちが生きているこの社会は、「あの時」定められた方向性の上に成り立っているのです。

良い悪いではなく、まずそのことを知らなくてはならない、そう痛感します。

例えば、憲法についても、
「日本国憲法は、アメリカに押し付けられたものだから、我々の憲法ではない」
そういった言説をよく聞きます。

確かに、日本国憲法は、日本人だけで作ったわけじゃありません。アメリカの、というかマッカーサーの意図が大きく働いたことは間違いないでしょう。
しかし、第二次世界大戦という途方もない戦争を経て、もう今後戦争なんて言う馬鹿げたことをしてはいけない、マッカーサーを始め、そう痛感した人たちの思いが――当時の時代を代表する大きな痛感が、人種を越えてあの憲法に結晶化したってことじゃないのか……そう感じられるのです。

「歴史を勉強する意味なんてあるの?」
歴史が好きだというと、そんな風に聞かれることがありますが、私は意味があると思います。歴史を知るということは、「今」が、「なぜ」「どうして」こうなっているかを知ることです。

本書はもちろんオススメなのですが、一緒に半藤先生の『昭和史』も読んでみてほしいと思います。

こちらは、太平洋戦争以前から、戦後の復興までの流れを知ることができます。(戦後篇ではそのあとも知ることができます!)
『マッカーサーと日本占領』はどちらかというと「点」です。特に戦後の5年間、マッカーサーという人をたどることで、その時の日本が見えてきます。
一方、『昭和史』は「線」です。流れの中で、その時の日本を知ることができると思います。

今まさに、熊本・大分地震が発生し、多くの方が被災しています。
災害も多く、国内外に課題が山積している日本に生きている私たちです。あの未曾有の大惨事、何が起こり、大先輩たちがどう対し、乗り越えようとしたのかを学ぶことは、必ず意味があると私は思います。

是非、お手に取ってみてください!

(むとう)

過酷な運命の最中にも、その清冽な魂は凛として輝く!――信玄の末娘・松姫の一生を描き切った傑作歴史小説、登場!『疾風に折れぬ花あり』/中村彰彦著


文芸雑誌『文蔵』さんの連載をお手伝いさせていただいてから、約三年。
思い返すも楽しい日々でした。毎月毎月、一番初めにお原稿を読めてしまうんですもの!これぞ、まさに編集の役得ですね!幸せとはこのことです!!

そして、いよいよ。
この時がやってきた~!!と、躍り出したいような気持で一杯です。

中村彰彦先生の『疾風に折れぬ花あり』

とうとう発売されました!

装丁がまた素敵ですよね!?
華やかで女性らしさがにおい立つようなデザインです!
そして同時に、中村先生のお作らしい重厚さもしっかりと兼ね備えていますから、中村先生の往年のファンの男性も、きっとためらわず手をのばしてくださることでしょう!
こちらはあの菊地信義さんのデザインですよ!さすがとしか言いようがないです。

そして、装画は日本画家として活躍されている宝居智子さんです。ステキな日本画ですね。
特にこの手の表現!ご覧ください!
八重桜の花びらが舞い落ちるのを夢見るように見上げてます。そして自然と指先が追いかけている。そしてその指先は、まるで花弁のようにピンクに染まっているのです。
いや~、眼福眼福。

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実は、この「桜」。本書にもとても大切な場面で登場します。

ちょっとネタバレになっちゃうかもしれませんが、本書の主人公、松姫さんは武田家が滅んでしまうことで、とてつもなく過酷な人生を歩むことになります。

その過酷な人生を、ともに歩んでくれたとも言える小袖があるのですが、その銘が「桜花(おうか)」というのです。桜色のとても美しい小袖です。
「桜花」は、大好きなお兄さんの奥さんが形見としてくれたもの。この「桜花」、これぞという時に松姫さんを導いてくれるような、そんな存在に思われるのですね。

名門のお姫さまだった世間知らずの松姫さんが、三歳の女児3人を育てながら、出家し、戦国の世を生き抜いていく。
何度も何度も絶体絶命といった場面がたち現れます。しかし、松姫は、涙ぐみながらも決して逃げません。一見たおやかで、素直で優しげなのですが、こころが強くなければ生き抜くことは、到底無理だったでしょう。

***

どんな人生でも、生きていくということは山あり谷あり。
楽な人生なんてないんだな、……と40過ぎて、ようやく実感を持って分かってきました。
突然ウソのような幸運が舞い込むこともある。想像を絶する不幸が襲い来ることもある。

そうしたことが起こった時、それをどう乗り越えていくのか、切り開いていくのか、それによってその人の魂のありようが見えてくるように思うのです。

とてつもなく過酷な状況の中でも、魂の輝きを失わず、まるで暗闇の灯火のように、蓮の花のように静かに生き抜く人が確かにいた――。

中村先生は、いつもそんな素晴らしい魂を、歴史の中から掬い出して、私たちに見せてくださるような気がします。

本書の主人公、松姫然り、そして保科正之公もそうです。
あれだけ魅力的な人物がいたことを、私は先生の小説で知ることができました。

そうそう、保科正之公も、本書で登場しますよ!健気でかわいらしい少年の幸松君として、ですけどね。ぜひ、お手に取ってみてくださいまし!

そして最後になりますが、中村彰彦先生、そしてN編集長さま、Y副編集長さま。
ご一緒させた時間は何もにも代えがたい、私の宝物です。
至らぬことも多々あったと思いますが、本当に素晴らしい時をありがとうございました!

(むとう)

文七・お糸がいよいよ祝言?!今回のおけらは春爛漫!!ますます絶好調の大好評シリーズ第6弾登場。『本所おけら長屋(六)』/畠山健二著 


お待たせいたしました!
早いもので今回で六巻目!
私が編集のお手伝いをさせていただいてから今回で5冊目です。早いものですね。

今回も、泣いて笑って笑って泣いて…。
「失敗しても、欠点があってもいいんだな。どんな人でも、そこにあるだけでもう意味があるし、面白いんだ」。
おけら長屋を読むと、いつもそんな風に思わせてくださいますが、今回もそんな畠山先生ブシ――”怒涛の人間賛歌”、ますます冴えわたっておられますよ!

さて、今回も全部で5つのお話、どれもこれも泣いたり笑ったりで大忙しですが、特に注目なのは、おけら長屋のアイドル・お糸ちゃん(20歳)と、左官の若き親方・文七さんの祝言ですね!

第四巻で、紆余曲折ありながらも、どうにかこうにかお互いの気持ちを告げ合い、結婚を約束した二人。前巻では祝言のお話はなく、一巻持越しの祝言とあいなりました!
お待ちかねの皆さんもたくさんいらっしゃると思いますが、今回も、おけら長屋はやらかしてくれます。めちゃくちゃな展開に、一時はどうなることかとはらはらしながらも、最後はやっぱりジンワリ胸が熱くなって…。あまり言いすぎますと、ネタばらしだと怒られてしまいますので、この辺に…。

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それから、今回第一話「しおあじ」では、お染さんの過去が語られますが、これがまたなんともいい感じですよ!
今回、個人的には大好きなお話です。ますますお染さんを好きになってしまうこと請け合いです。

過去と言えば、第二話の「ゆめとき」では、万造の過去が明かされます。万造は桜が好きじゃないのですが、それには深い深いワケがあるんです。
万ちゃんは、いかにも江戸っ子の、明るいハチャメチャ男ですが、実はなかなか切ない過去を持った人です。シリーズの中でも人気の高い第二巻「まよいご」で、捨て子だったことをがすでに語られていますが、今回は養父の秘密が明らかに…。

そうそう、第三話「とうなす」では、意外にも女性ファンが多い「八百金」こと金太にも、縁談が舞い込みますが、まあそうはうまくいかない、…というより、またおけら長屋のお節介が始まります。

…と、内容についてはこのくらいで。
あ、そうそう!今回のカバーは、満開の桜です。帯には「きっと小さな春が来る!」とありますが、本書を読みますと、そんなあったかい気持になれると思います。

ぜひぜひ、お手に取ってみてくださいね~!

(むとう)

常に「今」を出発点に生きる方法とは!?『ないがままで生きる』/玄侑宗久著(SB新書)


仙厓 無法の禅』で編集をお手伝いさせていただきました玄侑宗久先生の新刊が、SB新書さんより刊行されましたので、ご紹介させてください!

実は、本当にちょっとだけお手伝いさせていただきました。
お手伝いというのもおこがましいほどちょっとのことなのですが、さすが情け深い玄侑先生。まえがきに私の名前も入れてくださってます。
そうした先生と担当編集Mさんのお心遣いが本当にありがたくて、胸がいっぱいになってしまいました。ありがとうございました!

さてさて、そしてこちらがその新刊です!
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今回のご本は新書。『ないがままで生きる』というタイトルがステキですね~!

本文のほうではユーモアたっぷりのイラストもそこかしこに配置されていて、とてもキャッチーで読みやすいですよ。

さて、皆さんも、きっとこのタイトルに使われている「ないがまま」とは一体何なのか、気になっていると思います!

実際には読んでいただくのが一番面白いと思いますし、ネタバレになっちゃうかなと思いつつ、「ないがまま」という言葉についてだけ、ちょっとだけご紹介しちゃいますと……

「あるがまま」ということはよく言いますね。あるがままでいいんですよ、なんて言います。
しかし、先生は、そこを一歩踏み込むのです。

「あるがまま」ということは、すでに「在る」という状態がないと成立しません。
あるがままとはつまり、「『ある』ということをそのまま認めていいよ」、そんな意味かと思うのですが、では、「ある」と思えない場合、「ある」と自分で肯定できない、そんな人はどうしたらいいんでしょうか。

なるほど、そういう時ってありますよ。
たとえば私の場合。

失敗ばっかりやらかして、情けなくて恥ずかしくて、自分に何か「ある」なんてとても思えないとき。
自分にあるとしたらそれはマイナスのことばかりで何も肯定できない、そんな精神状態の時ってありますよね。

それなら「今」を出発点にしたらいい、「今」はゼロ地点です。つまり「ない」状態ですね。つまりその「ゼロ」、そのままでいいということです。

「いま」を積み重ねさい。それでじゅうぶん。

「ないがまま」で生きたらいいじゃないですか。

――そんな先生の言葉を聞いたような気がしてきました。(ここのところはすべて武藤の妄想なんですけどね)

そのほかにも、先生の優しくて真っ直ぐな言葉がたくさん詰まった一冊です。
禅の教えや老荘の考え方の入門編として読まれるのもお勧めですよ!
ぜひお手に取ってみてくださいね!

(むとう)

愛犬との生活は悲喜こもごも。本当の「人生の豊かさ」って!?『愛犬と「幸せ家族」になる方法』/安藤一夫著(PHP文庫)


犬の気持ちをちゃんと受け取り、人の思いをちゃんと伝えるために
思いを込めて編集を お手伝いさせていただいておりました『愛犬と「幸せ家族」になる方法』という一冊が、いよいよ本日発売になりましたのでご報告させてください!

著者の安藤一夫さんにとって、本書は処女作。

安藤さんのプロとしての的確なアドバイスはもちろんのこと、そのお人柄のチャーミングさ、そして愛情深さをできるだけ率直に読者の方に体感いただけるように出来たらいいな…と願いながらお手伝いさせていただきました。

安藤さんは、大阪は豊中市でドッグサロンを経営されてる「犬のプロフェッショナル」。そして、ご自身も三匹のわんちゃんの飼い主さんでもあられます。
だからこそ、犬の気持ち、飼い主の気持ち、両方がとてもよくわかっておられるし、「意外と勘違いしてること多いねんで」とおっしゃいます。

「犬の気持ちをちゃんと受け取れるように、飼い主さんの言いたいことも、ちゃんと犬たちに伝えられるようにできたらええなあ」
最初の打ち合わせの際、安藤さんはそんな思いを話してくださいました。

「そばで見てると、ようわかんねん。本人たちが幸せならもう何もいうことないんやで、もうそれでええやん。せやけど、ちょっとしたことでもっともっとお互い楽になって幸せになれる、思て…」

大好きだからこそやってしまう「読み違い」「勘違い」。
ある、あるなあ、ありますよね!?
これって実は、犬と人の間だけで起こることでもないですよ。人と人の間でも「読み違い」は起こります。こんな読み違いは、長年連れ添った夫と妻の間にも、あったりしますよね。

安藤さんは、時に人間同士の例を巧みに上げつつ、犬の気持ちが本当はどうなのか、飼い主の思いはどう伝わっているのか、を笑いたっぷりに解き明かしてくださいます。

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面白い。でも涙が止まらない!
そして、本書の真骨頂は、思いもよらぬ部分で現れました。
安藤さんは、関東生まれの私などからしたら「笑いのエリート」。大阪の笑いとはここまで計算されたものなのか!?すごすぎる!…と思っていたので、本書の個性は、「犬のことをちゃんと学んでいけるのに、大笑いしながら読めてしまう」という点じゃないか、と思っていたのです。

ところがところが…

PART5で、「老犬介護」についてぜひ書いてください、とお願いしていたのですが、それまですらすらと書き進めてくださっていた、筆が止まってしまいました。

「ごめん、武藤さん。書かれへん。考えるだけで辛い」

安藤さんは、身体の大きな、いかにも男性らしい方なんですが、同時にとても情にあつくて涙もろい、優しい方なんです。
私たちがそんな風にお願いしたとしても、犬のケアのプロフェッショナルとして感情を切り離して言葉は悪いですが無難にさらっと書くこともできたはずです。でも、そんなこと、安藤さんにはできないのです。その気持ちが、すごくよく伝わってきました。
だけど私も編集長も、だからこそ書いてほしいとお願いしました。「そのつらい思いは、全飼い主さん共通の思い。それは絶対に読者の皆さんの心に響く」。そう感じたからなのです。

辛いとおっしゃる著者に、私たちも酷なことをお願いしていました。でも、安藤さんはまさに身を絞るようにしてPART5を書き上げてくださいました。そしてできあがったPART5は、簡潔ながらもぐっと心をつかまれる、本当に素晴らしい章になったと思います。

そして、ダメ押しはエピローグ、そしてあとがきです。

安藤さんは、「エピローグ お別れの時」で、突然逝ってしまった愛犬しじみちゃんのお話を書いてくださいました。その時の恐怖感、絶望感。もっと何かしてあげられたんじゃないか……、という後悔の念。
その大きな悲しみは、犬を同じように失ったことのある私、さらには犬を飼ったことがないという編集長の心をも激しく揺さぶりました。

一応、私たちは「読む」プロです。ですから、もう少ししっかりと、冷静になって読まなくちゃ、と思うんですけど、どうしても、何度読んでも涙が湧いてきてしまうのです。

「何度読んでも、涙が出ちゃうよ~」

N編集長がそうおっしゃっていたのが、本当に印象的。そして、それを聞きながら私までもらい泣き、さらに安藤さんにお伝えしながら二人で大泣き……なんなんでしょうか。これは!??

私は本書を担当させていただいて、犬たちだけでなく多くの方々と、心を込めて関わっておられる安藤さんの「豊かな人生」を感じました。

愛犬との生活は悲喜こもごも。一緒にいる喜び、いなくなってしまったことへの悲しみ。
豊かな人生とは、そんなたくさんの思いをたくさん経験していくことなんじゃないか、そう思いました。そしてともに味わう存在がいるとなお深いんだなあと。その存在というのは、犬でも人でも同じことですね。

ぜひ、皆さんにもお読みいただき、そんなことも考えてみてくださったらうれしいなあ、と切に思います。
ぜひぜひ、お手にとってみてくださいまし!

(むとう)

 

おけら長屋のお節介は、ついに幽霊にまで!?巻を重ねてますます絶好調の大好評シリーズ第五弾登場!『おけら長屋(五)』/畠山健二著 


2013年7月からスタートした大好評シリーズ『本所おけら長屋』。3月と9月、年に二回のペースで刊行を重ねまして、ついに第5弾の登場です!

私も第二巻より、編集のお手伝いをさせていただいておりますが、回を重ねるごとに、先生の筆は冴えわたり、すっかり自分自身も、お江戸・本所に実在する人情長屋にいるような心地になっております。
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毎巻、「裏テーマ」を決めるとおっしゃる畠山先生。
今回の裏テーマはと言うと「ファンタジー」とのことなんですね。
どういうことかと申しますと、今回はちょっと不思議な出来事が物語を動かすキーになっているのです。
例えば、第一話「ねのこく」では、幽霊が登場しますし、第4話の「まさゆめ」では、夢の中で起こったことが現実に影響して…、といったかんじです。

拝読していて、さすがだなあ、と感心してしまいますのが、おけら長屋の連中にかかりますと、幽霊までお節介の対象になる、ということ。
最初はこわがってるんですけど、だんだん幽霊の身になってしまい、「どうにかしてやろう」となるのです。そこがまたたまらなくいいんです。

そして、今回も女性読者に大人気の、「殿様」こと、津軽高宗さんも再登場しますし、どのお話しも素晴らしく面白いのですが、私が特に好きなのは、第五話「わけあり」です。
第4巻の最終話「あやかり」で登場した、めちゃくちゃかっこいいお婆さん「お熊さん」が、再登場するんです!

先生が描く女性は、かっこいい人が本当に多いと思うんですよね。気風が良くて、思いやりがあって、かわいらしい。お熊さんも、まさにそんな女性です。
お熊さんの生業は「金貸し」です。でもただの金貸しじゃない。貧乏人に貸す金貸しなんです。ほとんど利子もつけないし、回収し損ねることも多いように思える、お熊さんの金貸し。
なんでそんなことができているのかが、今回明らかになります。そして、お熊さんがどんな人生を歩んできたかも……。

人生、決して良いことばかり起こる訳じゃない、でも、やっぱり精いっぱい生きるっていいなあ、人間っていいなあ、と改めて思えるお話になっているように思います。

「どの話が好き」が、人によって分かれるのが『おけら長屋』の真骨頂。皆さんも、ぜひお手にとっていただき、好きなお話を見つけてください!

(むとう)

「生きている、それだけで奇蹟」。――命・心・魂の問題を問い続けてきた著者、渾身の講演集!『自分という奇蹟』/五木寛之著


五木寛之先生の新刊をお手伝いさせていただきました!!N編集長、いつもありがとうございます~!

五木先生のご本は、『私訳 歎異鈔』を文庫化するときに一部お手伝いさせていただいたことがあるのですが、書下ろし〔語りおろし〕で初出で…という形のご本を担当させていただいたのは、今回が初めてです。

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今回のご本は贅沢にも「いきなり文庫」にて登場!

通常、単行本にしてから文庫に、ということが多い中で、いきなり文庫での刊行は、五木先生とN編集長の御英断の賜物でしょう。
文庫は、単行本と比べて価格も半分以下。読者にとってはとても手に入れやすい形態ですから。お値段もお手頃にして、ぜひとも多くの方に手にとっていただきたい、そんな思いがこもっていると思います。

本書は、講演で語られたことを文章に起こして、さらに再編集したものですので、先生の柔らかい語り口を感じながら読んでいただくことができ、かなり読みやすいかと思います。

先生は、講演の名手としても知られますが、本書には「なるほど」とうなづいてしまうような言葉やエピソードの数々がちりばめられています。
特に本書で重ねておっしゃっているのが、「光と影のうちの『影』の部分~悲しみや不安、絶望、涙~を、人として、もっと自然に取り戻してもいいのではないか」といったこと。
「日本人は古来、よく泣く民族だった」というエピソードや、昭和初期まで文豪たちが好んで使っていた「暗愁(あんしゅう)」という言葉を例にあげながら優しく説いておられます。

そして、さすが、そこからがまた五木先生ならではなのですが、

「平凡に生きる人も、失敗を重ねて生きている人も、世間の偏見に包まれて生きる人も、生きていることにまず価値があり、どのように生きていたかなどは二番目三番目に考えていいことなのではないでしょうか」

と、存在を全肯定する言葉を紡がれます。
これまでの先生の波乱万丈な人生を想像するに、この結論に至った先生のご心境と言うのは、計り知れない奥深さがある、と思うのです。

もし、生きていることに漠然とした不安を感じている、自分は価値のある人間なのだろうか……そんなことを少しでも思うことがあったなら、本書を手に取ってみていただきたいと思います。

先生は、ひとつに決めつけるようなことは決してされません。
ですから柔らかく、包み込むように(……時にその優しい言葉が、グサッと鋭く胸に刺さって取れないような気がしてくることもありますが)、読み手の存在をそのまま受け止めてくれるような、そんな大きな一冊になっているのではないかと思います。

ぜひ、お手に取ってみてください!!
(むとう)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第23回「はるか江戸を離れて」掲載!


ご紹介が遅くなってしまっておりますが、毎月PHP研究所さんで発刊されている文芸雑誌『文蔵』では、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」が絶賛連載中です。
最新号(8月号)が発売になっておりますので、7月号も併せてご紹介させてください。

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7月号「祈る女」では、亡き兄・仁科盛信の忘れ形見で、養い姫の一人であった生弌尼(しょういちに)を看取った、信松尼(しんしょうに)。

ここに武田信玄の直系のうちの一人が、はかなくも夭折してしまったのですが、一方で物語は大きく動きます。

江戸城内の比丘尼屋敷に住まう、信松尼の異母姉で、信玄の次女、そして穴山梅雪の未亡人である見性院(けんしょういん)が、二代将軍の乳母・大うば様を通じて知り合った奥女中『お静』さんが、いよいよ7月号で登場しました。

この『お静』さん、中村先生ファンなら「あ!ついに!」と膝を叩くことと思います。

中村先生が、世に広めた「会津武士」の生きざまを凝縮したかのような人物で、会津の崇高な精神の源となった、会津松平家の始祖、保科正之(ほしなまさゆき)公の生涯をえがいた大作『名君の碑』の世界が、いよいよ再び戻ってきました~!

このお静さんは、もともと小田原北条家の家臣だった神尾(かんのお)家の娘で、縁あって秀忠の乳母であり、大奥の実力者である大うば様に仕えることになりました。

そこで、恐妻家の秀忠に見初められ、正室・お江与(えよ)の方の許しがないまま、秀忠の側室になりました。

意外と思われるかもしれませんが、当時、戦国時代の気風がまだ色濃く漂うこの時代、妻を複数持つことは許されていましたが、正室の許可、というか、正室が勧めた女性を側室にむかえる、という形式をとることになっていました。

ですから、いくらお江与の方の性格が苛烈で、秀忠が恐妻家とはいえ、内密に側室を迎えてしまうというのは、やはり正室をないがしろにした行為です。

そして案の定ばれてしまい、なおかつ妊娠も発覚してしまうと、お静さんは何度も毒物で殺されそうになりまして、恐ろしくなって実家に逃げ帰ります。

そこで、お江与の方の復讐を恐れた実家の兄たちの決断により、子を堕胎させられてしまうのですが…。

8月号では、堕胎薬によってぼろぼろになってしまったお静さんを、それでも戻ってくるようにと説得する、秀忠からの使者がやってきます。

さあ、お静さん、どうする!??
戻るの?戻らないの~!!???

……と、ハラハラドキドキな展開になっております。

保科正之公に詳しい皆さんは、この後の展開を良くご存じと思いますし、保科正之公という綺羅星の如く優秀な人物が誕生した、という一事を持って考えてみましたら、仕方ないけどなあ、と思います。しかししかし。

同じ女性としてみると、どうもこの秀忠という人物は、信用なりません。
いくら正室がこわいからと言っても、一番力を持つ立場なわけですから、やる気になったらもっと守れるはずなのに、なんか逃げてるようにしか思えない。

やめときなはれ、戻らないほうがいい!!!
この男、真心を感じないダメなやつだよ!

……と、お原稿拝読しながら、思わず叫んでしまいました。

ちょっと感情移入しすぎましたね(笑)。
それはともかく、これからの展開はいよいよ目が離せませんよ~~!

ぜひお手に取ってみてくださいね!

(むとう)

特集「心と体に効く厳選12瀑 『滝』は絶景」@『サライ8月号』(小学館)掲載


就職して以来、ずっと書籍畑でお仕事してきましたので、雑誌にはいまいち疎いワタクシです。しかしそんな私にも、憧れの雑誌と言うのはございまして…。

週刊誌やファッション誌などは流行を把握するために読む、という感じなのですが、文化・芸術系の雑誌は、憧れの別世界、と言った趣でよく購入しておりました。
そういった雑誌も数多くありますが、その中でもエポックメイカーともいうべき、『芸術新潮』、平凡社さんの『太陽』、そして、小学館さんの『サライ』は別格。

今は、歴史や仏教に関係する書籍など担当させていただくことが多いので、仕事の合間に手に取って深呼吸しつつ勉強する、みたいな感じで親しんでまいりましたが…

それがですね!
なんと、そんな憧れの雑誌『サライ』さんで、お仕事させていただくという幸運に恵まれました。本当に嬉しいです!

20150710-1私が担当させていただいたのが、この↑『滝』の特集です。

取材・執筆(一部除く)を、一本ざっくりやらせていただいちゃいました~!
発注してくださったN副編集長、ありがとうございます!

振っていただいたテーマは、大好きな「滝」。
お写真は『日本の滝』(山と溪谷社)という大著を始め、数多くの滝本を出版され、滝のお写真で高名な北中康文さんです。
取材も本当に楽しく、また文章のほうも楽しく書かせていただきました。

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ご紹介した滝も、一筋縄では参りません。
Nさんが『心と体に効く』というテーマで厳選してくださってますので、かなり角度のある滝のご紹介になっていると思います。

そして、なんと言っても、北中さんのお写真が美しい!
この美しい写真を眺めていただくだけでも、浄化されていくかんじがしてくると思います。

そして、さすがサライさん!と思いますのが、その印刷表現です。ほんとに美しいです。北中さんのお写真を十分に表現されています。さすがNさん~~!

これから、夏ということで、涼を求めて滝を観に行くなんて、最高に楽しいですよね!参考にしていただけたら嬉しいです。
また、第一特集の「花火」も、「ごちそう列車の旅」もめちゃくちゃ面白いです。いいな、いいなあ。ホント、旅に出たくなっちゃいますね。
ぜひお手に取ってみてくださいまし~!

そして、改めまして、お仕事振ってくださいましたN副編集長、またNさんと出会わせてくださいましたK社のU先輩、そして、アドバイスいただきました古巣Y社の元ボスKさん、また取材にご協力いただきました皆様に篤く御礼申し上げます。
ありがとうございました!ぜひ、今後ともよろしくお願い申し上げます!!

(むとう)