2017年は「慶派イヤー」!⑧迫りくる慶派の奔流!この究極の空間に在る歓び。『運慶』展@東京国立博物館(9/26~11/26)


やっぱり、『運慶と慶派』展という名前のほうがしっくりくるかも…

円成寺さんと、願成就院さんのお像について語りだしたら止まらなくなってしまった私ですが、全体的なお話もちょっとだけ…

今回の展示のストーリーとしては、運慶の生涯の時間軸を大きな縦軸にしています。
「運慶前夜」とも言える慶派の始祖・運慶のお父さんである康慶のお仕事、そして、さらに慶派前夜とも言える仏像の数々などから始まり、運慶自身の仏像、運慶がプロデュース・総指揮をしたであろう仏像、そしてそのチームの中で綺羅星の如く、運慶の息子たちの仏像……と進行していきます。

正直言って、運慶がほとんど一人で作ったものもありますが、監督だけしたであろう仏像も多いので、『運慶と慶派』展という名前のほうが、実情に合ってるように思ってしまいます。

このあたりは、あえて『運慶』とされたんだろうとは思いますが、せっかく担当した仏師の名前がわかってるんだし、それはやっぱりそう記してもいいんじゃないかなあ、なんて素人考えで思うわけです(図録にはちゃんと書かれてますけども)。

例えば、このあまりにも有名な「無著菩薩像」@興福寺。
こちらの図録の表紙にも登場されてますが、こちらは、図録にも書かれていますけれども、〔総指揮:運慶、制作:運賀〕って感じなんですよね。

実際に作ってるのは、運慶の6名いる息子のうちのひとり・運賀だとされているそうです。もちろん、運慶の指揮でもって行われてますから、運慶作、と言っていいのかな?……でも、やっぱり、せめて「運慶・運賀作」ってクレジットでも良いのではないかしら…。なんて思ってしまうのでした。

もし、「総指揮」した人を作者とする、というルールを貫くなら、円成寺さんのお像も「康慶作」となってしまいますもの。それはなんか違う、と思いませんか?

まさに怒涛! 迫りくる慶派の奔流!!

そんなわけで、今回のみどころは運慶一人ではありません。運慶を中心として、父・康慶、息子6人の関わった仏像がドドンと集結していますので、それがまた怒涛のように次から次へと押し寄せてくるのです。
ぜひその奔流の中に身をひたして、次はあり得ないかもしれないこの究極の空間を楽しんでいただきたいのですが、あえて、個人的に特に注目したものを挙げてみますと…

なんと言っても、長男・湛慶作の高知雪蹊寺の「毘沙門天三尊像」と、高山寺の「子犬」像です!!
雪蹊寺には、私も幸運なことに二回、こちらにお邪魔したことがあります。とはいってももう10年以上前の話。久しぶりに毘沙門天立像に拝観できて嬉しかったです。やっぱり素晴らしいですね!

(図録P200より引用)

運慶の毘沙門天立像@願成就院を意識していると思われますし、そういう意味ではやはり運慶には及ばないのですが、でもこの毘沙門天さんは、湛慶さんの毘沙門さんです。湛慶さんのお像を見るとなんだか「清明」という言葉がひょんと浮かぶのです。
お父さんの偉大さが極め付き過ぎて、どうしても比較されてしまいますが、この爽やかさ、清らかさ、明るさは、やはり特別な個性ではないかと思います。

(図録P204より引用)

湛慶さんの個性を特によく感じられるのは、高山寺の「子犬」像ではないかと思います。高山寺さんも大好きで、何度も拝観していますが、明恵(みょうえ)上人のために作られたというこの「子犬」像は、とにかく可愛い。子犬のフクフクとした足元、無邪気にみつめてくる愛らしい瞳、くるんと巻いた尾っぽ。本当に愛らしい。

こちらは仏像ではありません。あくまでも、「子犬」の像なのですが、高山寺の開祖・明恵上人の慈悲深いエピソードと相まって、何とも言えぬ存在感を感じます。
こういう優しげな雰囲気が、いかにも湛慶さんだなあ、と思うんです。

隣に展示されている「神鹿」像@高山寺もとても可愛いです。明恵上人は春日社(大社)を篤く信仰していましたが、その春日社ゆかりの神鹿です。こちらも、神秘さというよりは、鹿本来のしなやかな美しさ、可愛らしさが先に立つ像ですね。

湛慶さんは、きっと優しい人だったんだろうな~。

運慶さんのような、スーパー父さんの下で同じ仕事をすることになって、さらに五人の弟たちをまとめながらの…って、本当に大変だったろうな…。

ちなみに、有名な三十三間堂の中尊(丈六千手観音菩薩坐像)は、湛慶さんの手によるものです。三十三間堂は、慶派だけでなく、院派や円派など当時の仏師大集結で建立されました。考え方も違う、個性的な仏師たちをひとつにまとめ上げるなんて、とてつもない大事業だったことでしょう。しかし、湛慶さんはやり遂げました。それだけ人徳のある人だったんでしょう。

中尊に在る銘によれば、その時、83歳。……まさに超人!!

今回はちょっと珍しいものとして、その中尊の光背にある「三十三応現身像」のうち、迦楼羅像、夜叉像、執金剛神像の三体を取り出して、出品されています。

これまでにも、光背にある状態は見てきたはずなのですが、お堂にある状態ですとお花や影の塩梅などで、光背の細部まではさすがによく見えません。こんなふうに近くで見られる機会は、なかなかないでしょう。ぜひ、見逃さないようにしてくださいね!

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さて、長くなりましたが、運慶展のレポートはこのあたりで。
11月1日ごろに、二回目を観に行こうと思っています。
何度拝見しても、また感動するでしょう。それが、運慶の、ひいては仏像の魅力なんですよね。

『運慶』展 東京国立博物館(9/26~11/26)