2017年は「慶派イヤー」!⑧迫りくる慶派の奔流!この究極の空間に在る歓び。『運慶』展@東京国立博物館(9/26~11/26)


やっぱり、『運慶と慶派』展という名前のほうがしっくりくるかも…

円成寺さんと、願成就院さんのお像について語りだしたら止まらなくなってしまった私ですが、全体的なお話もちょっとだけ…

今回の展示のストーリーとしては、運慶の生涯の時間軸を大きな縦軸にしています。
「運慶前夜」とも言える慶派の始祖・運慶のお父さんである康慶のお仕事、そして、さらに慶派前夜とも言える仏像の数々などから始まり、運慶自身の仏像、運慶がプロデュース・総指揮をしたであろう仏像、そしてそのチームの中で綺羅星の如く、運慶の息子たちの仏像……と進行していきます。

正直言って、運慶がほとんど一人で作ったものもありますが、監督だけしたであろう仏像も多いので、『運慶と慶派』展という名前のほうが、実情に合ってるように思ってしまいます。

このあたりは、あえて『運慶』とされたんだろうとは思いますが、せっかく担当した仏師の名前がわかってるんだし、それはやっぱりそう記してもいいんじゃないかなあ、なんて素人考えで思うわけです(図録にはちゃんと書かれてますけども)。

例えば、このあまりにも有名な「無著菩薩像」@興福寺。
こちらの図録の表紙にも登場されてますが、こちらは、図録にも書かれていますけれども、〔総指揮:運慶、制作:運賀〕って感じなんですよね。

実際に作ってるのは、運慶の6名いる息子のうちのひとり・運賀だとされているそうです。もちろん、運慶の指揮でもって行われてますから、運慶作、と言っていいのかな?……でも、やっぱり、せめて「運慶・運賀作」ってクレジットでも良いのではないかしら…。なんて思ってしまうのでした。

もし、「総指揮」した人を作者とする、というルールを貫くなら、円成寺さんのお像も「康慶作」となってしまいますもの。それはなんか違う、と思いませんか?

まさに怒涛! 迫りくる慶派の奔流!!

そんなわけで、今回のみどころは運慶一人ではありません。運慶を中心として、父・康慶、息子6人の関わった仏像がドドンと集結していますので、それがまた怒涛のように次から次へと押し寄せてくるのです。
ぜひその奔流の中に身をひたして、次はあり得ないかもしれないこの究極の空間を楽しんでいただきたいのですが、あえて、個人的に特に注目したものを挙げてみますと…

なんと言っても、長男・湛慶作の高知雪蹊寺の「毘沙門天三尊像」と、高山寺の「子犬」像です!!
雪蹊寺には、私も幸運なことに二回、こちらにお邪魔したことがあります。とはいってももう10年以上前の話。久しぶりに毘沙門天立像に拝観できて嬉しかったです。やっぱり素晴らしいですね!

(図録P200より引用)

運慶の毘沙門天立像@願成就院を意識していると思われますし、そういう意味ではやはり運慶には及ばないのですが、でもこの毘沙門天さんは、湛慶さんの毘沙門さんです。湛慶さんのお像を見るとなんだか「清明」という言葉がひょんと浮かぶのです。
お父さんの偉大さが極め付き過ぎて、どうしても比較されてしまいますが、この爽やかさ、清らかさ、明るさは、やはり特別な個性ではないかと思います。

(図録P204より引用)

湛慶さんの個性を特によく感じられるのは、高山寺の「子犬」像ではないかと思います。高山寺さんも大好きで、何度も拝観していますが、明恵(みょうえ)上人のために作られたというこの「子犬」像は、とにかく可愛い。子犬のフクフクとした足元、無邪気にみつめてくる愛らしい瞳、くるんと巻いた尾っぽ。本当に愛らしい。

こちらは仏像ではありません。あくまでも、「子犬」の像なのですが、高山寺の開祖・明恵上人の慈悲深いエピソードと相まって、何とも言えぬ存在感を感じます。
こういう優しげな雰囲気が、いかにも湛慶さんだなあ、と思うんです。

隣に展示されている「神鹿」像@高山寺もとても可愛いです。明恵上人は春日社(大社)を篤く信仰していましたが、その春日社ゆかりの神鹿です。こちらも、神秘さというよりは、鹿本来のしなやかな美しさ、可愛らしさが先に立つ像ですね。

湛慶さんは、きっと優しい人だったんだろうな~。

運慶さんのような、スーパー父さんの下で同じ仕事をすることになって、さらに五人の弟たちをまとめながらの…って、本当に大変だったろうな…。

ちなみに、有名な三十三間堂の中尊(丈六千手観音菩薩坐像)は、湛慶さんの手によるものです。三十三間堂は、慶派だけでなく、院派や円派など当時の仏師大集結で建立されました。考え方も違う、個性的な仏師たちをひとつにまとめ上げるなんて、とてつもない大事業だったことでしょう。しかし、湛慶さんはやり遂げました。それだけ人徳のある人だったんでしょう。

中尊に在る銘によれば、その時、83歳。……まさに超人!!

今回はちょっと珍しいものとして、その中尊の光背にある「三十三応現身像」のうち、迦楼羅像、夜叉像、執金剛神像の三体を取り出して、出品されています。

これまでにも、光背にある状態は見てきたはずなのですが、お堂にある状態ですとお花や影の塩梅などで、光背の細部まではさすがによく見えません。こんなふうに近くで見られる機会は、なかなかないでしょう。ぜひ、見逃さないようにしてくださいね!

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さて、長くなりましたが、運慶展のレポートはこのあたりで。
11月1日ごろに、二回目を観に行こうと思っています。
何度拝見しても、また感動するでしょう。それが、運慶の、ひいては仏像の魅力なんですよね。

『運慶』展 東京国立博物館(9/26~11/26)

2017年は「慶派イヤー」!⑦とにもかくにも願成就院の毘沙門天立像、円成寺の大日如来坐像…!『運慶』展@東京国立博物館(9/26~11/26)


鎌倉時代の支配者・北条得宗家の氏寺、願成就院

仏像というと、どうしても関西といった印象が強いかもしれませんが、運慶の仏像で最も重要なお像の数体は、東日本にあるんです~!

その中でも最も重要なのは、願成就院です!!(と言いきっていいですよね?!)

願成就院は、伊豆半島の付け根、駿豆線というステキなローカル線の韮山駅から歩いて15分ほどのところにあります。

こちらには、運慶の真作とされ、国宝指定になっている仏像が、なんと5体もいらっしゃるんです!!
それにしても、なぜここにそんなすごいお像が?…と思われるかもしれませんが、この辺は、源頼朝の舅・北条時政の領地で、願成就院のスポンサーは時政だったんですね。ちなみに、頼朝の配流先である「蛭ヶ小島(ひるがこじま)」も、現在の願成就院から歩いて20分ほどのところにあります。

そんなわけでして、願成就院は、北条家のゴッドファザー・時政開基の特別なお寺。鎌倉幕府の支配者・北条得宗家の氏寺のようなお寺だったんです。戦国期の始まり頃(1491)に燃えてしまうまでは、そりゃもうゴージャスで、広大な大伽藍だったそうですよ。

運慶の「リアル」とは…

前回お話ししましたが、小学生の頃にこちらの仏像に出会ったことが、私の仏像人生に始まりとなりました。今回はその五体の中から一体だけの登壇となっています。それが、幼い私が最も釘付けになったお像、「毘沙門天立像」です。

このお像の凄さというのは、何度拝観しても、見慣れたつもりでもう一度見ても、あらためて、感動してしまうというところです。
すごい仏像というのは、まるで山や大木や滝や海のように、そこに在るのが自然である、…と思わせてくれるお像だと私は思っているのですが、このお像はまさにそんなお像だと思います。この一体が、仏教の教えの具現化であり、宇宙、自然事象その物なんじゃないか、と。

よく、運慶を褒めるひとつの表現として「リアル」という言葉がありますが、そのリアルさは、そういう意味でのリアルさだと思ったほうがいい、と私は考えます。
「仏」は超絶した存在です。その超絶した存在を、いかに「超絶した存在」として「リアル」に造り上げるか。誰も見たことがないその姿をいかに「本当の存在」として造り上げるのか、そこが、僧侶でもある仏師の理想とするところでしょう。ですから、「より人間らしく、写実的に」。そういう意味でのリアリティの追求ではないと思うんです。

確かに、人体の研究を良くされていただろうし、「まるで生きている人間のような」表現をうまく取り入れてると思いますが、しかし、実際に運慶作の仏像に拝観しますと、「人間っぽい」とは思いません。こんなすごい存在を、人間の手が生み出しちゃったのかーー!と驚くばかりです。
特にこの願成就院の毘沙門さんは、何度見てもそう思うんです。
今回も、会場で拝観して、何度も何度も、そう思っては溜息をつきました。

処女作、円成寺の大日如来坐像の「ひとり立体曼荼羅」感

もう一体、初めて拝見した時に、「ひええええ」と思った仏像は円成寺さんの大日如来坐像です。

実は、このお像に初めて拝観したのは、ごく最近。なぜか拝観したことがなかったのですが、大先輩Wさんのお導きで、ごくごく近くから拝観させていただく機会をいただきました。

その時に感じたのは、このお像を中心として果てしなく広がっていく「宇宙」!

すみません、わかりにくい表現で。

でも本当に、意識が広がって宇宙の中に自分ががあるようなそんな感覚がしたんです。
大日如来という存在は、仏教の中の「密教」という教えがあるんですが、その密教が描き出す世界観で、宇宙の中心にいるとされる仏さまなんですね。

このお像は、一瞬にしてその難解な教理を「感じ」させてくれました。
難しくって、経典を読んでも、私に理解できるとは思えませんが、このお像はそのとてつもない世界がどうも「在りそう」だ、という実感を感じさせてくれたのです。

す、す、すごい。
これぞ、仏師の目指す表現の世界なんじゃないのかな…と!

この大日如来坐像を造った時、運慶はまだ20代後半です。お父さんの康慶に見守られながら、一人で作り上げた初めての一体と考えられています。
それにしても、すごい。こんなにすごいお像をそんなに若くして作ってしまうとは…。

「最初の作品に、すべてが現れるということはよくあることだよ」

興奮してオロオロする私に、ご一緒いただいたWさんは、そう言って笑いました。
Wさんは、数多くの伝説的な展覧会を企画された大御所。美術について、大変な見識をおもちの凄いお方です。

「だから前から言ってるでしょ、ぼくはこちらのお像が運慶の中でも一番好きだ、って」

わ、わ、わ、わかりましたー!Wさん!
私も、ものすごく納得しました―!

そんな興奮状態で、うるさいほどふんふん頷きながら、円成寺さんを後にした私なのですが、今回も、このお像に再会できるのを、本当に楽しみにしておりました。

今回、このエポックメイキング的なお像は、展覧会構成の第一章「運慶を生んだ系譜」の中で、初めて登場する「運慶作」のお像として登場していました。

正直言って、お寺で拝観させていただいた時とはかなり印象が違います。展覧会でのお顔と、本来の場所でのお顔はびっくりするほど印象がちがうということは、よくあることですが、このお像はそれが顕著でした。
できれば、また円成寺さんで拝観したい、そう思ってしまいましたが、それにしても素晴らしいお像であることには変わりはありません。
(続く)

『運慶』展 @東京国立博物館

2017年は「慶派イヤー」!⑥始まりました!『運慶』展!!@東京国立博物館(9/26~11/26)


『快慶』展、そしてついに始まった『運慶』展!

待ちに待った『運慶』展、いよいよ始まりましたね~!

『2017年は「慶派イヤー」』ということで、何度か既に弊HPでも書かせていただいておりますが、今年は4-6月には『快慶』展(@奈良博さん)にて開催され、秋には、この『運慶』展が開催されるということで、多くの仏像ファンが浮足立ち続けた一年、と言っていいんじゃないでしょうか。

それにしても奈良博さんの『快慶』展、よかったな~。
あの「金色の坩堝(るつぼ)」空間は、本当に素晴らしかった。

快慶という人がつくりあげようとしたものの一端に、ちょっとだけ身をひたせたような気がしました。「理解した」とかではなく「身をひたせた」という表現が自分的には正しいかんじ。あの深遠で濃厚な世界を私ごときが「理解した」なんておこがましい。でも、理屈じゃなく体感させてもらえた何かはある、そんな感じなのでした。

さて、一方の『運慶』展はどうかな~。

10月15日より前の平日が狙い目かも?!

今日は贅沢にも、神仏探偵ことH先輩と、担当編集のSさんもご一緒です。
いいですね!誰かと一緒にというのは!

平日木曜日のお昼頃でしたが、待ち時間は20分でした。とはいえ、実際にはそんなに待たなかったように思います。10月15日にNHKの『日曜美術館』で放映があるそうなので、その前までだったらだいたいこんな感じなんじゃないかな、と予想。
なので、皆さん、そこをひとつポイントとお考えいただくといいんじゃないかなと…。

様々な雑誌で特集を組まれていましたから、どんなラインナップかはご存じの方が多いと思います。私は、こういういい方はあれですが、あえてあまり雑誌を拝見しないようにしてました。
というのも、運慶や慶派のお像は、本当に有名なものばかり。拝観したことがあるものが多いんですね。なので、今回は「何が来て何が来ないか」を、知らないままには拝見したかったんです。

仏像好き人生のエポックメイカー・毘沙門天さん@願成就院!

実は、仏像好きの人生を歩むことになるきっかけをもらった仏像というのがありまして。それは、願成就院の仏像なのです。
あれは確か、小学2年生のころ。伯母の家が願成就院の近くにありまして、私がすでに仏像好きだと聞いた伯母が、願成就院に連れて行ってくれたのです。

それまでは、好きだけど、「唯一大好き!」というわけではなかったんです(エジプト考古学にも同じくらいはまっていたのでした)が、この出会いにより、圧倒的に仏像のほうへとひきつけられてしまったんです。

それも、願成就院の「毘沙門天」像でした。
看板の写真にも登場している、こちらのお方です!

30年ほど前のことですから、当時の願成就院は本当に小さくて、子どもが見てもかなり質素な現代風のお堂でした。その小さなお堂の中に、ものすごい存在感の阿弥陀仏、毘沙門天、不動三尊像が所狭しと並んでおられました。

その時の衝撃ときたら……!!

仏教のこともよくわかりませんし、何の知識もありませんけど、「うわあああ」と思いました。ここまで振り切ってると、これがものすごいんだということは、子どもにだってわかるんです。

でもよく考えたら、ここ数年お目にかかっていません。2013年に国宝に指定されたと聞いて、まるで身内の尊敬している長老が受勲したような、誇らしい気持ちになったりしてたんですが、最後に拝観したのはそれ以前ですから、もう7・8年は拝観できてませんね。

ポスターにも図録の表紙にも登場しているくらいですから、間違いなく来られているでしょう。願成就院は国宝5体こられてるのか。否か……。

(続く)

『運慶』展 @東京国立博物館
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1861

 

『運慶』@東京国立博物館、観に行ってきましたー!


トーハクさん開催中の『運慶』展にいってきました!

今日のお昼頃で20分待ちと出ていましたが、さほど待たずに入場できましたよ。

日曜美術館の放映がたしか10/15だったと思うんですが、その前までが狙い目かも。

詳しいレポートはまた改めて書いてみたいと思っておりますが。

とりあえず、仏像好きのみなさま!

言わずもがなですが、観に行かなくてはならない展覧会ですよー!!

日タイ修好130周年記念特別展「タイ~仏の国の輝き~」展 @東京国立博物館(7/4~8/27)


実は、一年間だけバンコクで生活していたことがあります。もう6年前のことになってしまいます。
内乱が起こったりしていろいろ大変でしたが、今となると良い思い出です。

タイ語の学校に通いながら、時間を見つけてはお寺を見て廻りました。クルンテープ(バンコクの現地の呼び方)は1782年に作られた新しい都ですので、日本人の感覚ですと古いものはあまりありません。
でも、篤い仏教国らしい素晴らしい寺院が無数にあり、時にはお祈りや瞑想に混ぜてもらいながら、穏やかな時間を過ごさせていただきました。楽しかったなあ。

(写真は有名なワット・ポーの涅槃仏)

当時、バンコク国立博物館では、大々的な改修が行われていたように思います。日本の九州国立博物館の協力がかなりあったのかな?という記憶が(そんなポスターが貼ってあったんです)。
正直言って、展示方法は相当にざっくりしていて説明もほとんどなく、もったいないなあ、と思っていましたので、九博さん、ぜひどうにかしてください!と陰ながら声援を送っておりました。

さて、そんな豊かな文化交流のひとつの成果なのでしょうか。今年はかなり大々的なタイの仏像を見ることができる展覧会が開催されます。

(4/11~6/4)九州国立博物館

(7/4~8/27)東京国立博物館

九博さんのほうはもう終了してしまってますが、東博さんは来月の開催です。

私的に楽しみなのは、タイ最初期の王国ドヴァーラヴァティー(モン族、6~11世紀ごろ)、シュリーヴィジャヤ王国(マレー系、タイ南部・7~15世紀)の仏像などが展示されるあたりですね。どれだけ見せてもらえるのかな~っと楽しみです。

もちろん、スコータイ王国(13~15世紀)のものも楽しみです。スコータイは、タイ族最初の王朝ですので、このあたりからいかにもタイ族らしい仏像が造像されているような気がします。

ぜひ皆様も、足を運んでくださいね~!

2017年は「慶派イヤー」!⑤『快慶』展はまるで「金色の坩堝」


「金色の坩堝」のような空間
さて、『快慶』展はもう4日に終わってしまったのですけれども(汗)、『快慶』展と、拝見してとても印象深かったお像について、ちょっとレポートしておきたいと思います。

会場の印象を一言で言うと、「金色(こんじき)の坩堝(るつぼ)」。
もちろん金色の仏像だけではないのですけど、印象として何だかもう、「金色」なのです。
「金色」は仏の肌の色。仏像の肌を金色にするのは、経典にある通りのことで、とても正しいわけですね。

日本人の好みからしますと、全身がキンキラキンだと、なんだかちょっとあれですよね。成金のような、古くても新品に見えてしまうような、そんな感じがして、ついつい木肌の渋みを見てホッとしてしまいます。

しかし、例えばテラワーダ仏教の地、東南アジアに行きますと、むしろキンキラキンが正しい。タイの信徒は喜捨して金箔を買い求め、お像にペタペタ貼ってお祈りをします。そして、ミャンマーなんかですと、由緒ある仏像の光背が電飾でギラギラだったりします。光背は光り輝くものですから、金色をさらに一歩進めて、電気の表現を導入してしまっているわけです。信仰としては、な、なるほど…と思います。でも、日本人の自分からすると夜の町の電飾のように見えてしまうのですけど……。

閑話休題。

ちょっと話がずれてしまいましたが、『快慶』展の「金色」は、そのような金色とはちょっと違った印象でした。日本風の金色といったらいいんでしょうか。日本人にとって心落ち着く金色、という感じ。快慶が彫り出す仏像の、優しく落着いた様子が、全体に静かな重みを創出しているのかもしれません。

このチラシの表現、そのままの印象でした。
それにしてもこのチラシのデザインは何度見てもすてきですね!

考えれば考えるほど、鼻血モノの出展仏像の数々

それにしても、すごいラインナップでした。今図録を見返してみても、「このお像の公開ひとつで、ものすごい人が集まるわ!」というお像が、これでもかと大集結しています。こんなことはもうあと20年はないんじゃないでしょうか。できれば、もう一度見ておきたかった…。

その中でも、独断と偏見で、個人的に印象深かったお像をピックアップしてみますと…

■醍醐寺(京都)
弥勒菩薩座像……三宝院本尊。今回初めて拝観。いやもう、本当に傑作でした!運慶の力強さに対して、快慶は優しい印象がありますが、快慶にももちろん「力強い」表現がある。それはこういうふうになるんですよね、と何度もうなずきました。

不動明王像……初見。こちら、実は今回最も印象が強かったかもしれません。こんなに力強く美しい不動明王はないんじゃないかってくらい!

■金剛峯寺(和歌山)
孔雀明王坐像深砂大将像
……恥ずかしながら、金剛峯寺に行ったことがないのです。なので、こちらのお像もすべて初見。素晴らしかった!特に深砂大将像にぐっときました。

■清水寺(京都)
千手観音菩薩坐像
……奥院本尊の秘仏!!新潟の出開帳、わざわざ観に行きましたよ~~!(涙)まさか再びお会いできるとは。

■耕三寺(広島)、造像当時は伊豆山神社(静岡)
阿弥陀如来坐像
……あんまりにも優しい雰囲気に、思わずうっとりしてしまいました。髻を高く結い上げたいわゆる宝冠阿弥陀像。天台宗ならではの像容ですね。

■遣迎院(京都)
阿弥陀如来立像
……チラシにも掲載されているお像。これぞ、快慶!ですよね!?ひっそりと穏やかなのに、ものすごい存在感。完璧に整ってるのに、なぜか近しい。
像内からは、12000名もの人たちが勧進をし、結縁したことが分かる結縁交名が発見されたとのこと。

掲載写真なしで、わかりづらくてすみません!
勝手ながら、一般的にお像の写真を公開されているお寺さんのリンク先を付させていただきました。小さな写真だったりしてわかりにくいかもしれませんが、なんとなくはお分かりいただけると思います。

また余計なことを申し上げますが、写真と実際のお像はかなり印象が違いますので、ぜひ、本物に会いに行かれることをお勧めします!

* * * * * * * *

それにしましても、秋の『運慶』展が楽しみでなりません。今回の『快慶』展で感じたことを、より鮮明に感じられるのではないか、と思っています。快慶が目指したもの、運慶が目指したもの。それらを体感できる絶好の機会です。

それから、『快慶』展で得た教訓としましては、『運慶』展は一度ではなく何度か足を運ぼう、ということですね。私も少なくとも二回は観に行きたいと思います。

そしてさらに。

『運慶』展をより楽しむために、清泉女子大学の山本勉先生の一日講座が開催されます。そちらで予習をしていくと万全ですね!
7月の開催ですが、まだ予約間に合うかもしれません。ぜひチェックしてみてくださいね!

「運慶と快慶 東京・奈良の国立博物館特別展にちなんで
特別展 運慶を鑑賞するために」山本勉先生
日時:2017年7月8日(土) 13:30~15:40(要予約)
http://www.seisen-u.ac.jp/rafaela/lecture/oneday.php

2017年は「慶派イヤー」!①『快慶』展@奈良国立博物館(6/4まで開催中)と『運慶』展@東京国立博物館(9/26-11/26)を見逃すな!


「今年は、慶派イヤーだね」

今年は、年賀状でそんな言葉を書いてくださった先生がいらっしゃいましたが、仏像ファンにとってはまさにたまらない「慶派イヤー」、到来中ですね!

春は奈良博さんで「快慶」展。
秋は東博さんで「運慶」展。

昨年作成されたチラシは、裏表でその二つを印刷されていて、そりゃもうかっこよくて、ワクワクしちゃいました。
どちらが裏表、というわけではありませんが、一面はこの快慶展。そして…
もう一面は、「運慶」展、と!

いずれを飾るお像のセレクトも、むむむむ~、さすが、そうですよねえ、というお像です。
快慶さんならではのいかにも「安阿弥様(あんなみよう)」の阿弥陀如来立像@遣迎院。
そして、
あまりに有名な運慶さんの無着(むちゃく)菩薩立像@興福寺。
か~!たまりませんよね!

……そしてあっという間に2017年。
奈良博さんの「快慶」展が始まってしまいました。
会期はあまり長くないですよね。もう行かれましたでしょうか。油断してると見損ねてしまう!と焦りながらもなかなか日程が定まらず、ひやひやしましたが、私も先週ようやく拝見することができました。

「慶派」とは?

ところで、改めて「慶派」とは何かについて、少しおさらいしておきましょう!
すごくすごくざっくり言ってしまえば、鎌倉時代初頭に活躍した奈良仏師・康慶(こうけい)を始まりとして活躍した一派を言います。
運慶は、康慶の実子で弟子、快慶も康慶の弟子の一人なんですね。

康慶は、奈良仏師の中でも傍系でしたが、南都焼討(治承・寿永の乱)で燃えてしまった東大寺・興福寺の復興造像を、息子や弟子たちとともに請負い、大活躍。幕府要人の仕事もを多く手がけました。
そして、さらに運慶や快慶は、その仕事をさらに発展させ、それぞれが、より本質的でかつ斬新な彫刻様式を確立しました。

それにしても鎌倉時代というのは、すごい時代です。

動乱の時代そしてその後の安定期――こういう時代の転換期には、あらゆる分野で天才が出現するんですね。
仏教も、今も日本仏教の多数を占める多くの宗派がこの時期に誕生しました。この時代の凄い人を並べてみると、「え?この人とこの人が同時期に生きてたなんて、いったいどんなすごい時代なの?」と驚いてしまいます。鎌倉時代とはそんなすごい時代です。

そういう意味でも、仏像造像分野もその例にもれません。

「運慶」と「快慶」。

この二人の巨人が同じ時代を生きた、しかも同じ師匠をいただき、さらに一緒に東大寺や興福寺の造像をしたなんて、ほんとすごいことです。

立場から言うと、運慶のほうが師匠の息子で、跡を継いでますので、快慶は一歩下がっている感じではありますが、それはそれ。
二人の巨人が目指す方向ははっきり違いますから。

今回のこの二つの展覧会は、まさにそのことを明らかにする、という意図もあったのではないかと思います。

(つづく)

仏教美術の源流に触れる!/「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏」展@東京国立博物館(~5/17まで)


東京国立博物館表慶館にて行われている「インドの仏」展に行ってまいりました~!

表慶館と言われてもピンとこない方も多いかもしれませんが、本館の左側にあるこの美しい西洋建築でございますよ。

大正天皇(当時皇太子)のご成婚を祝して建築されたこちらは、日本初の本格的な美術館建築だそうで、重要文化財です。関東大震災にあっても倒壊しなかったといいますから、きらびやかなだけでなくとてもしっかりとした造りなんでしょうね。

好みはともかく、日本ではなかなかお目にかからないバロック様式の建築物です。貴重ですね。
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思い起こしても、なかなかこちらで展覧会というのは開催されていなかったと思います。私もそこそこトーハクさんにお邪魔してますが、昔、スリランカの仏像を招へいした時、メディア向けの説明会か何かでこちらに入ったことがあった、かな?という程度。

今回は全面的に使って、インドの仏像を見せていただけるということで、建物を見るという意味でもとても楽しみでした。

今回の展示で、とにかく印象深かったのは、非常に良質な初期仏教のレリーフや仏像を一堂にみられたことです。

すごくざっくり言ってしまえば、仏陀こと、ゴータマ・シッダールタが亡くなってからしばらくは、仏陀を「人」で表現することはなされませんでした。

最初期は、仏陀の遺骨を納めるストゥーパ(塔)を建立することで表現されました。

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(写真、左は「法輪の礼拝」、右は「菩提樹の礼拝」。法輪と菩提樹は仏陀を象徴的に表している)

そして、その後、ストゥーパとその周囲を荘厳(しょうごん)するために、周囲に彫刻がなされるようになったのですが、そこに彫刻されたのは本生話(釈迦の前世譚)、仏殿(釈迦の生涯)といった教化的なもので、仏陀そのものは仏足石、法輪といった象徴的なもので表現されていました。

そして、仏陀が亡くなってから500年ほど経ってから、ほとんど同時期に人体表現がされるようになります。AD1世紀ごろ、マトゥラー(インド北部)とガンダーラ(アフガニスタン東部からパキスタン北西部)です。

両方ともイラン系王朝「クシャーン朝」の支配下にありました。クシャーン朝は仏教を篤く庇護していたんですね。

20150423-2こちらの見開きだと分かりやすいですね。(図録P56-57より引用)

左の仏像がマトゥラー、右側がガンダーラのもの。日本では圧倒的にガンダーラが有名ですが、図録で見る限り左の仏像はAD1世紀ごろで、ガンダーラの仏像よりも1世紀ほど先行してますね。
クシャーン朝と言えば、仏教を庇護したカニシカ王が有名ですが、マトゥラーの仏像が出現したのは、彼の在位より前ということになります。ほほ~~。

こんなことを書きながら世界史の地図なんかを見直したりしてましたら、無性になつかし楽しい。ちょっと忘れがちでしたけど、私高校時代、世界史専攻だったんですよ。だから日本史はあんましちゃんとやってない。日本史は趣味でやってたんだよなあ。だからどうしても史料なんかを読めないんですよね。

とと、話しを戻しますけれども…。

このような初期仏教の流れをつぶさに見つつ、14世紀くらいまでの大きな流れを見ることができます。一部ミャンマーの仏像は16~19世紀のものが出ていますが、もうちょっと古いものはなかったのかな~。コルカタ博物館蔵、ということで仕方がないかな。

そういう意味では、スリランカの早い時期の仏像も少し出てるとよかったかな~。
いや、だからコルカタ博物館蔵なんだから仕方ないですよね。

と、私の個人的希望はともかく、とても面白い展覧会でした!

ぜひ、足を運んでみてくださいね。

東京国立博物館
コルカタ・インド博物館蔵 インドの仏展
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1701

仏教美術の源流を観る!「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏」展開催(3/17~5/17)


20150217

ちょっと先の話になりますが、東京国立博物館さんでは「みちのくの仏像」展のあとに、こちらが開催されますね!

インドと言えば、お釈迦さんの生誕地と連想する人は多いんじゃないでしょうか。
もうちょっと詳しく言うと諸説あるそうで確定されていませんが、ネパールとインドの国境辺りに生まれたということなんだそうですが…。

ちなみに『仏像』が作られるようになったのは、ブッダが亡くなってから5世紀ほど後、発祥地は、ガンダーラ地方(現・アフガニスタン東部とパキスタン北部周辺)で一世紀半ごろ。そして少し遅れてマトゥーラ地方(現インド北部)で作られるようになりました。

今回の展示は、そのあたりの流れをコルカタ博物館所蔵の逸品でもって、観ることができるようです。楽しみですね!

個人的には貝葉経のコレクションが観られるのも楽しみ♪

「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏」展
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1701#top

 

東博にて「みちのくの仏像」展、明日(1/14)から開催!!


東博さんは、今年も必見が目白押しですね!

まず、幕開けはこの「みちのくの仏像」展。
本館の特別五室での開催ですので、平成館でやるよりも小規模ですが、内容はとても濃ゆいですよ!

なんと言っても、「東北三大薬師」そろい踏み、がまずすごい!

国宝・勝常寺さんの薬師三尊、重文・双林寺の薬師さん、同じく黒石寺の薬師三尊、が一堂に会しますよ~!

さらに、鉈彫と言えばこちら、という有名な仏像、天台寺さんの「観音菩薩像」(重文)も!

天台寺さんは、別の意味でもすごく有名ですね。
奈良時代創建とされるまさに名刹なお寺さんなのですが、明治の廃仏毀釈以降様々な災難に遭い、衰退の一途をたどっていたそうなのです。

昭和も半ばを過ぎたころ、作家としても高名で、中尊寺貫主も務めた今東光(こん とうこう)さんが、天台寺復興のため奔走。しかしガンになってしまい、後事をお弟子の瀬戸内寂聴さんに託されました。その後は寂聴さんが住職をされ、説法を行って多くの人を集められました。ドキュメンタリーなどにもなりましたからご存じの方は多いのではないでしょうか。

寂聴さんも、師である今東光さんの導きで中尊寺で得度されてますから、今回中尊寺さんから出品がないのは、すごく寂しい気がしてしまいますが、何か事情ごありなんでしょう。

ちょっと話外れてしまいましたが、規模は大きくありませんが、仏像好きにはたまらない展覧会ですよね!

また、同じく1/14から、お隣の特別四室で「3.11大津波と文化財の再生」も開催されます。こちらも必見です。「3.11オ歩津波と文化財の再生」展は、一般入館料で見ることができるみたいですね。
ちなみに「みちのくの仏像」は1000円ですが、収益は東北の被災文化財の修復に充てられるとのこと。ぜひ、皆さんも足を運んでくださいまし!

「みちのくの仏像」展@東京国立博物館(1/14~4/5)
http://michinoku2015.jp/index.htm/

「3.11大津波と文化財の再生」(1/14~3/15)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1692&lang=ja