muto の紹介

ありをりある.com編集長。アウトドア系出版社を経て、ありをる企画制作所を設立。編集者・ライターとして活動中。気になる分野は歴史・伝統文化・仏教・いろんな国のいろんな考え方など。好きな食べ物はあんことなす。趣味は三線弾きと剣道。

2021年、新年のご挨拶


新年あけましておめでとうございます!

2020年はコロナでいろんなことが変わりました。
これまでのやり方では通用しない一年、と言えばそうですが、新しい方法を試すことが許される、そんな一年だったと思います。

私にとっては、これからの人生においてとても意味のある一年でした。編集メインという仕事柄もあり、自分のことは後回しにしてしまう癖があるんですが、2020年ほど自分のために時間を使った一年はありませんでした。自分と向き合い、自分がやりたいことを問い直し、インプットの時間が持てたことは、何よりの幸運でした。

今年は昨年にインプットしたことを、アウトプットする年にしたいと思っています。まずは、4月に自著本を出版することになりました。単独では初めての本なので、ドキドキしてますが、今一生懸命文章を書いてます。そして、尊敬する先生のお仕事をお手伝いして、2冊ほど本を出すべく、動き出しています。

そして編集のお仕事も、今まで以上に心を込めてやらせていただきたいと思っています。今、編集としてお手伝いさせていただいているお仕事は、大好きな先生のお仕事しかありません。3月と9月には、畠山先生ご執筆の大ヒットシリーズ『おけら長屋』16巻と17巻も刊行される予定ですが、これも楽しみでなりません。

フリー編集という、相当に弱い立場でありながら、このように好きな先生の作品だけやらせていただいているということは、奇跡みたいなものです。本当に幸せなことだと、改めて痛感しています。少しでもご恩返ししていきたいです。

今年は、「初心」を大切にしたいと思います。

私は本が大好きでこの仕事をやってます。編集をして、文章書いているのは、面白いことを一人でも多くの人にお伝えしたいと思っているからです。
これが私の初心なんです。その部分を、改めて大切にしていきたい。それを根源として、新しいことにどんどん挑戦していきたいと思っています。

今年も皆様。
本年もご指導ご鞭撻賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

武藤郁子 拝

その謎は「地形」に理由があるんです!/『地形で読み解く古代史の謎』関裕二著(PHP文庫)


ご紹介が遅くなってしまいましたが、関裕二先生の『地形で読み解く古代史の謎』の編集をお手伝いさせていただきました!

ここ数年、「地形」に注目する人は増えていますね。

確かに、地形は大事です。歴史上の謎と呼ばれるものは、政治的事件だけをおいすぎると、よくわからなくなったりしますけど、地形を見てみたら、「なるほど、この位置に深い川があったら、そりゃこれ以上前に進めないわ」みたいな感じで、いっきに謎が氷解するなんてことがよくあります。

今でもそうですよね。例えば、取材アルアルなんですが、「地図アプリで3キロ、徒歩35分と出たので、余裕で歩けるじゃんと思って行ってみたら、その道筋はアップダウンの激しいほぼ山道で、35分でたどり着けなかった」なんてことがよくあります。行ってみないとほんと分からないし、行ってみると合点がいく…。「机上で終わらずに、現場に行って体感するのが一番」と、関先生はいつもおっしゃいますが、本当におっしゃる通りです。

そんな関先生が、「地形」にフォーカスして書かれた『地形で読み解く古代史』(KKベストセラーズ)をリニューアル。『地形で読み解く古代史の謎』としてPHP文庫に再登場!!
邪馬台国、ヤマト建国の経緯、古代遷都などなど、日本古代史の謎を、先生が読み解いてくださいますよ~。

今回は地図を多めに配置しております。そして、今と昔では地理も変わっているので、一部ではありますが、その当時の地図(推定)を掲載するよう頑張りました。実際に地図もご覧いただきながら、先生のキレッキレな解釈を堪能していただけると思います。

ぜひお手に取ってくださいね~!

(むとう)

仏像にもっともっと会いたくなる!『仏像に会う』西山厚著(ウェッジ)


長年お世話になっております西山厚先生が、ついに仏像の本を上梓されました!

奈良博さんで学芸部長として八面六臂のご活躍をされていたころから、お忙しいことは重々承知ながらも、どうか先生の「仏像の本」を作ってください、ファンとして待望しております!と言い続けてまいりました。そんな私にとって、まさに待望の一冊です。

さすがです。さすがとしか言いようがない。
何がさすがかと言うと、本文から少々以下、抜萃させていただきます。

ーー【時代分け】
時代分けは政治史が基準となるので、ここでは厳密に考えなくてもいいと思っている。(中略)まず仏像と出会うことが大切で、それぞれ自由に感じていただけたら、それでいいと思っている。

冒頭で、こういうことを言って下さるわけですよ。このスタンスは、西山先生ならではで、その教えに、私も多分に影響を受けています。学術的な側面はもちろん大切かもしれないけれど、それよりなによりまず「心で仏像と出会う」。その大切さを先生はずっと教えてくださっていますからね。

私自身の体験からしても、仏像との出会いは、理屈ではないと思います。何かぐっとくるものがある、それは、非常にパーソナルな出来事で、人それぞれ違う、大切な体験だと思うのです。仏像との出合いと言うのは、そういうことがあるんですよ、ほんとに。

先生にお話をうかがうと、そのパーソナルな出会いに、より深度が加わります。美術的にどうとか、そういうことだけではなく、その仏像がなぜそこにいるのか、その背景の物語を先生が教えてくださると、途端に奥行きが生まれるのです。

先生の講演会がいつも満員御礼で、多くの方に愛されて止まないのは、先生のお話を聴くことで、そういう体験をしたいとみなさんが思っておられるからだろうと思います。この本は、まさにそういう体験をさせていただける一冊ですね。

拝読していると私自身も大好きな仏像も多く、自分の好みが、先生と重なっていることを静かに喜びつつ、ぜひ私もお目にかかりたいと思う仏像に付箋をしました。

特に絶対会いに行きたいと思ったのは、福井県小浜市の加茂神社の「千手観音」像。小浜市は何度も訪ねていますが、こちらのお像はまだお目にかかったことがありません。

それから、滋賀県・栗東市の金勝寺の軍荼利明王像。金勝寺は一度は行ってみたいと思っているお寺さんですが、なかなか行けていません。やっぱり行かねばですね。

そして、先生の文章を読んでいると、私が大好きな仏像の皆さんにもめちゃくちゃ会いに行きたくなってしまいました。今年は一度も奈良に行けてないしなあ。今はコロナ禍ということもあって、何となく行きづらいですが、本書を読みこんで、十分に準備したいと思います。

ぜひ、仏像大好きな方も、これから仏像に出会いたい方も、お手に取ってみてくださいね!めちゃくちゃお勧めです!!

(むとう)

117万部突破大人気シリーズ最新刊登場!!今回は「春夏秋冬」人生は色とりどりですねえ…/『本所おけら長屋(十五)』畠山健二著


編集のお手伝いをさせていただいている畠山健二先生の『本所おけら長屋』シリーズ第15巻、本日発売になりました!

周りでは、待ちかねたよ~と言って下さる方もチラホラ……。今回も、ご期待通り。泣いて笑って、存分に楽しんいただけるすごい作品ですよ!

今回の作品は全部で四話。

「はるざれ」

「なつぜみ」

「あきなす」

「ふゆどり」

……もうおわかりですね??
そうです、春夏秋冬でございますよ!!

これまで作品の中に、畠山先生は「季節感」をあまり入れないようにしておられました。春夏秋冬を入れて描くのは、時代小説としては王道ですよね。江戸時代のお江戸を描くのに季節ごとの行事を入れるのは常套手段。いかもそう言う雰囲気が出ますから……。

『おけら長屋』は「会話の妙」が勝負だと、先生はお考えなので、あえて季節感には頼らない…そんなお考えもおありだったんじゃないかと思います。

しかし今回は、あえてテーマそのものに、「季節」をまとわせてこられました。それこそ「満を持して」の四作品ということだと思いますし、本当に珠玉の、力作ぞろいになっております。

今回の四話はですね…、なんというか…。いつもそうではあるんですけども、いつもに増して何度読んでもグッときます。しみじみ深い、と申しますか……。先生の人生哲学がにじみ出ていると申しますか……。

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!!

それから、もう一つお知らせです!!

畠山先生責任編集のムック『東京スッタモンダ』が9/15に刊行されました~~!!

こちらは、畠山先生が長らく『旅行読売』さんで連載されていたコラムを一挙掲載するとともに、『おけら長屋』の副読本として人物紹介や、お散歩マップはじめ、いろんな企画が掲載されていますよ!

鉄斎さんゆかりの黒石藩探訪をはじめ、ミステリーハンター宮地眞理子さんとのはしご酒、三遊亭兼好師匠との対談、狛犬ハンター・ミノシマタカコさんとめぐる狛犬散歩だったり……と、とにかく盛りだくさん!楽しく・面白くを追及された、珠玉の一冊です。

こちらも、ぜひ最新刊と一緒に、お手に取ってみてくださいね~!
私は今回は関わっていないのですが、読者として大変楽しく拝見させていただきました!お勧めです♪

(むとう)

連載『フカボリ山の文化論』第8回目「月山と月神と山の食文化」。出羽三山で気づいた”生きるために絶対必要な才能”とは!?/YAMAP MAGIZINE


旅する時、やっぱり食という要素は大事ですよね。私は取材でもプライベートでも、とにかく地元の方が普通に食べているものが食べたいんです。それが一番おいしいですからね!

「食」はもっとも体験しやすい文化です。その地の食材を使ったお料理を味わうのが、その土地と最も早くアクセスする方法ではないか、と思います。

そんななか、個人的に大好きな山形県、特に出羽三山について書こうとしたときに、やはり食文化について触れないわけにはいられませんでした。

出羽三山には、大好きなので何度か旅しています。宿坊に泊まって羽黒山→月山→湯殿山と歩いたこともありましたし、即身仏にお詣りしながら、山麓をグルグル回ったこともあります。豊かな文化が重層的に存在している、実に濃ゆい場所ですから、様々なテーマで書くことはできたと思いますが、今回はちょっと変化球。あえての食文化にしました。

そして、コロナ禍でのひきこもり生活のなかで、月山の体験を思い起こしながらつくづく思いついたのは、これから必要な才能について、です。

難しいことじゃなくて、シンプルなことがやっぱり大事なんじゃないかって話なんですけどね。人間は「食べる」ことがだいじですよね。でも私は、日々の煩雑さに紛れて、そのことを忘れてるんじゃないのか?気づきました。改めて、その大切なことへの感性を研ぎ澄まさないとあかんな、と思ったのです。

そんなお話を書かせていただきました。ぜひのぞいてみてくださいね~!

***

さて、そして残念ながら、連載は今回で最終回になりました。突然のことで私が一番びっくりしていますが、このご時世ですから、しょうがないのかなと思っています。

あ。

もし、この企画に興味のある媒体の方がおられましたら、お声掛けくださいね~!

(むとう)

連載『フカボリ山の文化論』第7回目「金剛山と動く人々の系譜」。役小角・行基・空海・楠木正成に共通するのは自由で強い魂!/YAMAP MAGIZINE


歴史を見てみると、歴史上に名を残すような天才が、どうしてこんなに集中して登場したの?と驚く時代や場所があることに気付きます。

どうしてなのかわかりませんが、天才が生まれやすい時代や場所というのはあるのかもしれません。革新的な流れが、全体に渦巻いているからなんでしょうか。

さて、そんな時代と場所で、今の日本文化を屋台骨を形成した場所の最も重要な場所が、金剛山地ではないかと、私は思っています。そんな思いもあり、私にとって金剛山地は憧れの地ですし、特別な場所なのです。

そんな思いを込めまして、『フカボリ山の日本論』の第7回目は金剛山について書かせていただきました。

金剛山には、定住する様式を持つ人々ではなく、動く前提で暮らす人々の聖地だったのではないか、と思ってるんですね。

修験道の祖とされる役小角。

日本仏教黎明期の傑僧・行基。

大乗仏教の到達点である密教の伝承者・空海。

日本史上最大の軍事的天才・楠木正成。

………わあああ、いかがですか、この綺羅星のようなラインナップ。

こんなすごいビッグネームが、すべて金剛山で修行してるんですよ。これは偶然ではないと思います。そして彼らには、共通点があると思うのですね。それは、自由を愛する気風、清濁併せのむようなスケールの大きさ、理想を貫く心の強さ。私はそんな共通点を、「金剛山魂」と名付けてしまいました。

そんな思いを込めて、本編の方を書いてみました。今回の金剛山は、大阪府サイドの金剛山、という感じですね。実は、奈良県サイドの金剛山地と、大阪府サイドの金剛山は、全然雰囲気が違うんです。そのあたりももうちょっと書きたかったな~。いずれそのへんのお話も、いずれかで書いてみたいと思います。

金剛山というと、低山ハイクのイメージが強い方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひこんな角度でも楽しんでいただけたらと思います。あの場所の凄さをもっと多くの人に気付いていただけたらなと切に願っております。

(むとう)

連載『フカボリ山の文化論』第6回目「丹沢大山と石の女神と江戸男」。粋で鯔背な江戸男に愛されたのは”石の女神”!?/YAMAP MAGIZINE


ひきこもり生活も2カ月目に入りました。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

フリーならではだと思いますが、私もひきこもり生活を始めて、今日まで1度も電車に乗らず、ひたすら自宅のある街をウォーキングするという日々を送っております。狙ったわけではありませんが、毎日1時間半の運動、3食自炊、8時間睡眠というゴールデンコンボが完遂でき、かつてなく健康です。ものすごーく健康です……。

元気すぎて取材に行きたくて仕方がありません。
今なら結構過酷な取材も耐えられると思います。京都特集でも秘境特集でも、心から喜んで複雑な日程組んで取材に行きますよ。ほんとほんと。

しかし、今はどこにも行けませんよね。ああああ…。

いずれにしても、今は我慢が一番大事。もう少し我慢します。もう少し辛抱してパワーを溜めておいて、外に出ても大丈夫となったら、取材に行きまくります!!

さて、前置きが長くなってしまいましたが、そんな中、「フカボリ山の日本論」の第6回目を公開していただきました!


今回のお山は、「丹沢大山」(神奈川県)。

私は埼玉生まれなのですが、父方の親戚類が箱根から御殿場、伊豆、沼津にかけて分布していたので、大山もたまに連れて行ってもらいました。取材できない今ですので、そんな懐かしいお山を想いだしながら、執筆してみました。

大山と言えば、落語の「大山詣り」が有名ですね。今は落語がお好きな方も多いかなと思って、そんなお話から始めてみましたよ。

大山詣りは、江戸時代に大流行した夏の行事です。「大山講」といってみんなでお金を貯めて(こういうグループを講と言います)揃っていく、年に一度のお楽しみ。しかも大山講は、基本的に男性だけで行くものだったので、当時の浮世絵なんかを見ましても、何だかやたら粋で鯔背で、カッコイイんです!

そんな江戸男のカッコよさと、彼らが愛した大山について考えていたら、やっぱり大山の神さまは女性なんじゃないかなと思えてきまして……。そんな説はどこにも載っていませんが、しかしそんな妄想を熱く語ってしまいました。ぜひ、詳細は本文をご覧ください!
(むとう)

御神木について熱く語る(バーチャル)トークセッション開催します!【『神木探偵』by本田不二雄氏応援企画】


4月10日に発売になりました本田大兄の新刊『神木探偵』ですが、リアル書店さんの店頭で見ていただけないことを危惧し、自称妹分としては、これは何かせねば!と一念発起。バーチャルなトークセッションを開催することに致しました。

場所はFacebook上。zoomと連携させての開催です。実はすでに第1回目は「今なぜ御神木なのか」と題しまして15日に敢行、慣れない中不手際も多かったのですが、温かい皆様の支えで、どうにか進行できました。

今回のセッションは、とりあえず3回を予定してまして、第2回目は来週水曜日、4/22の夜9時より、ライブ公開しようと思っています。テーマは「御神木の凄さの理由」。ぜひ見に来ていただけたらと思います。

Facebookページ『神木探偵』トークセッション
https://www.facebook.com/shinbokutantei/

(むとう)

神仏探偵が選んだ次なる標的は御神木!『神木探偵~神宿る木の秘密~』本田不二雄著(駒草出版)


御神木を一冊の本に!?

大兄と慕う“神仏探偵”こと本田不二雄さんが、新刊を出されます!
発売は4月10日と伺っているので、ややフライング気味。でも、予約もできますからね!ご紹介させていただいちゃいます!

『神木探偵~神宿る木の秘密~』本田不二雄著(駒草出版)


いやあ、それにしてもすごい本が誕生しました。これまで巨木をまとめた本はありましたが、「御神木」となると類書はないんじゃないかと思います。

「御神木を一冊にまとめてみようと思ってる」

そんなお話を伺ってからはや数年…。これを成し遂げられたら、まさに偉業!と思い、私も首を長くしてお待ちしておりました。

実際のところ、脱稿までは大変な道のりだったようです。神社仏閣の場合、史料が在ったり、土地の研究者が書かれたものがあったりと、文字資料が期待できますが、「御神木」となるとなかなかそうはいきません。

ですから、さすがの本田さんをしても、かなりの難題だったことでしょう。担当編集の方は、さぞドキドキされたと思いますが、結果的に上がってきた原稿が、これだけ濃い内容の本ですからね。きっと納得されたんじゃないでしょうか。

大地を母体として発生する「生物の王」の風格

本書を拝見すると、引っ掛かりポイントがあまりにたくさんあり、私自身のライフワークにおける気づきもたくさんいただいてしまったので、どこからご紹介していいか本当に迷います。でもあえて最も唸ってしまったポイントを二つだけ挙げてみたいと思います。

まず第一点。それは、「御神木」となる樹種が、地方によってかなり特徴的(例えば九州は楠と杉、関東では椎、銀杏、タブ、オモテスギ、北陸ではウラスギ、中部・近畿ではケヤキ、楠が多い…といった傾向があるようなんです)で、そのたたずまいが、不思議なほどその地方の雰囲気とマッチしているということ。

例えば特に九州の楠。九州では楠が圧倒的に多いんです。もともと楠は日本全体で見ても8割が九州に分布しており、「楠木の巨樹ランキングを見ると、上位10本のうち8本が九州に在り、それらの多くは社寺の境内にある」(p11より引用)んだそうなんですね。「たくさん生えているから、御神木にもなりやすい」という言い方もできるかもしれませんが、そういう言い方では、何か違和感がある。

私は本田さんの写真を拝見していて、楠の外観や特徴などが醸し出す雰囲気が、いかにも九州とマッチしているようにと感じました。「この場所を母体として発生する生物の王」と言いたいような、超絶した風格があり、そこに、その木が「神」として大切にされてきた理由がある気がして、何やら腑に落ちるのです。

(上の写真は、日本一の巨樹「蒲生のクス」。鹿児島県姶良市蒲生八幡神社境内にある。幹回りは24.22mで根回りは33.57mと言う。想像を絶する巨大さ)

九州の御神木(楠)は、7本紹介されていますが、どれもものすごい存在感で圧倒されます。縦に伸びていくようなパワーと言うよりも、世界を巻き込んで全方位に膨張していくようなパワーに満ちているように感じます。

本田さんによりますと、楠は巨樹になると、内側が朽ちて落ち、ウロになることが多いそうなんですが、そのウロがまた大きい。上の写真を観ていただくと扉が見えますね。この扉の中はそのウロだそうで、なんと畳八畳分の空間が広がっているんだそうです。そんな空間(外界)を抱え込んでなお、膨張し続ける生物--そんな感じがして、まさに神にふさわしい!と感心してしまいます。神、というか、「世界樹」って感じですね、ほんと。

自然発生だけではない?「御神木」ネットワーク

そしてもう一つのポイントは、「御神木」の発生に、人間の手が介在している場合がある、というお話です。この視点は、誰も言ってこなかったんじゃないかなと思うんです。さすが本田さん!

全方位に膨張していくような楠に対して、高く空に向かって突き上げていくような樹種の代表と言えば、杉ではないかと思います。この杉もご神木になっているのをよく見ますね。九州でも、杉は御神木として大切にされています。

本田さんは、その御神木となっている杉(特に800年以上の樹齢のもの)が、実は同じ杉を分けたもの(クローン)だったという記事を発見。そこから、関東までつながる「御神木ネットワーク」の物語が紡がれます。

細かいお話は、ぜひ本文を!と思いますので、この辺で切り上げますが、めちゃくちゃ面白かったですよ!

聖なるものを分霊するという方法は、実は日本の信仰世界では、お馴染みのやり方です。「勧請(かんじょう)」する、とか、分祀するとも言いますね。神は分けられるんです。御神木も、ある意味そういう発想で分けられたのかもしれない、なんて私も思ったりして…。

さてさて、ご紹介のつもりが、ずいぶん長くなってしまいました。

上にご紹介したのは、たまたま九州に偏ってしまいましたが、そんなテンションの濃さで全国の御神木を紹介しています。その数なんと69柱!!!

つまりは、ものすごく濃い一冊です。最初から通読するのが、もちろん一番いいだろうとは思いますが、気になる項目から読み始めるのもありかも、と思います。自分が住んでいるエリアの御神木から読むのもおすすめです。私は本書を拝読して、新しい視点を一つ、いただきました。今後は、旅する中では、御神木をしっかり見なくちゃと思ってます。今から次の旅が楽しみでなりません。

(むとう)

連載『フカボリ山の文化論』第5回目「大江山連峰と鬼と太陽」。鬼伝説のホットスポットは太陽信仰の重要ポイントでもあった!/YAMAP MAGIZINE


記事『【京都大江山 酒呑童子】鬼の伝説を追う山旅』で取材させていただいて、気になって仕方がなかったんですが、この要素まで入れてしまうと、とっ散らかってしまうので、あえて語らずにおいたファクターがありました。

それが、『太陽信仰』です。
大江山周辺はもう、なんていうか……。
めちゃくちゃ太陽信仰の気配が強いんです。

(左下に見える三角の山が、その信仰の中心ではないかと思われる「日室ヶ嶽」)

元伊勢が二箇所もあるのは、当然ながら理由があるんだよなあ、と痛感しました。そこで、連載の方でもそのことについて書かせていただきました!

大江山連峰と鬼と太陽 | フカボリ山の文化論 第5回

大江山には、酒呑童子の物語だけじゃなくて、他に2つも鬼の物語が伝承されています。なぜそれほど鬼の物語が集中しているんでしょう。

私はその理由を、古代の強力な勢力だった「タニハ(丹波)」と「ヤマト(大和)」の長期にわたる熾烈の衝突の残像なのではないか、と思っていますが、このエリアというのは、その「タニハ」における、最も重要な信仰のありようを今に伝えてくれている場所なんじゃないか、と思っています。

今回の原稿では、本当にアウトラインを語るだけで精一杯でしたが、「鬼と太陽」という言葉を使えただけでちょっと満足しました。自己満足ですけども。

そんなわけで、ぜひご覧くださいね~!

(むとう)