女系の血統に注目すると見えてくる古代史の真相!『女系で読み解く天皇の古代史』関裕二著(PHP新書)

どの時代でも「生きもの」としての人間は、そうそう変わらないと思います。特に喜びや悲しみ、祈りたくなる…といったエモーショナルな部分は変わらないですね。一方、環境に伴って、より生存しやすいパターンに暮らしを合わせていくという点では、変化はつきものです。歴史を振り返る際には、その変化を想像のうちに入れておかないと見誤るでしょう。

今回、関先生が改めて提案されているのは、「女系の血統から古代史を読み解く」という方法です。というのも、古代史の社会と、現在の私達が属する社会とで決定的に違うのが、子育ての主体が「女系家族」にある、という点です。「妻問婚」とも言いますが、男性が女性の実家に通い、子どもができたら、女性の家族が養育します。つまり母の一族に、養育の主体があり、基本的には、父方は口を出せません。

そんな社会であるということを念頭に古代史を見てみたら、これまで、男系の血統ばかりを見すぎてきたのではないか??……ということなのです。帯に、

「古代の天皇は父親よりも、母親の血統で決まった」

とありますが、この視点は非常に重要ですよね。当時の王族は、母方氏族に育てられて大人になり、その後、経済的に支援してくれるのも母方なのですから。その母方がどんな氏族であるかを知ることは、当時の実態を想像するのに必要不可欠なことでしょう。

今回先生が読み解くのは、6世紀から8世紀にかけて。日本史上でも「女帝」が続出した特別な時代です。一般的には、「中継ぎ」として女帝が登場した…と説明されることが多いのですが、果たしてそれだけが理由でしょうか。他に男性王族がいるにもかかわらず女帝が立ったことには、もっと積極的な理由があったのではないか…ということを、関先生が「女系血統」という一つの視点を示しながら、読み解いてくださいます。

またその視点から、そもそも古代には、大王になれる「三つの血統」があったのではないか、とおっしゃいます。その血統は、女系血統から読み解けるのではないか、…と、まさに目から鱗が落ちる「関先生史論」が展開されていますよ!

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!

(むとう)

祝!累計150万部!そしてやっぱり笑い泣きの傑作ぞろい!「人は”心”で動く」んですよね…/『本所おけら長屋(十八)』畠山健二著(PHP文芸文庫)

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おかげさまで、累計150万部を突破しました!
まずは、ファンの皆様に、御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

発売日は明日(3/24)。少々フライングですがお許しを…

重ねに重ねて18巻。
数えてみましたら、18巻でなんと86話!!!

一話一話が入魂の逸品という、このクオリティのお話を書き続けられたのも、先生のお力なのは言うまでもありませんが、皆様の応援のお声が原動力ではないかと思います。

どうかこれからもご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます!

そしてちょっとだけ、ご本の内容についてもご紹介いたしますと、

第一話「あやつり」……
なんとなんと、津軽高宗さんの奥さん・玉姫様が初登場!女性ファンも多い高宗さんですが、既婚者だということは、意外と知られていなかったと思います(初期にちょこっとだけ設定が出ていたんですけどね)。おおらかすぎる高宗さんなので、奥さんの気持ちは全然わかってません。そんなことから起こる大騒動です。ぜひぜひお楽しみに。

第二話「たけとり」……

暴力亭主から逃げてきた心優しい美女が登場。おけら長屋の面々が彼女を守るため奔走しますが、魚辰さんが惚れてしまって…というお話。実は、この設定を今風の言葉で言えば「DV」ですよね。現代らしいテーマをお江戸に織り込むというのも、先生の真骨頂ですね。

第三話「さいころ」……

何歳になっても恋心は止められません!今回は、木田屋さんと大家の徳兵衛さんが恋敵になっちゃますよ。もうこの設定で、ファンの皆さんもニンマリとされるんじゃないでしょうか。この二人とおけら長屋の連中の思惑がからんだら、面白い結末にしかならないですね!

第四話「きんぎん」……

八百金こと金太さんは、あまたいる登場人物の中でも相当な人気者で、「金ちゃんが出てこないと寂しい」「金ちゃんをもっと出してください」と、ファンの皆さんからお叱りをいただきます。でもこのお話で、金ちゃんファンの皆さんにもご納得いただけるでしょう。今回は賢い野犬・銀太が金太の相棒になります。個人的なことで恐縮ですが、私は何度も読んでいますけれども、そのたびに涙があふれてしまいます。こういうお話もまた、先生の十八番ですよね。いいんですよ、ほんともう。

そんなこんなで、今回も全力でお勧めしたいお話ばかりの四話です!!
ぜひ、お手に取ってくださいね~!

(むとう)

文献と考古学から読み解く古代史最大のミステリー!『邪馬台国とヤマト建国の謎』関裕二著(PHP文庫)

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関先生の新刊をお手伝いさせていただきました~!

今回のお題は、邪馬台国とヤマト建国。古代史ファンにとって、「邪馬台国」も「ヤマト建国」もたまらないテーマですよね。本書はその魅力的なテーマを、関先生ならではの視点で書き下ろしていただきました。

なんといっても「邪馬台国」は、あえて申し上げるのもなんですね。古代史最大のミステリーです。これほど長い間、プロ・アマに関わらず、論じられ続けてきたテーマは、他にないんじゃないでしょうか。

中国の文献に残された「倭」、そしてその中の一国である「邪馬台国」と女王「卑弥呼」。その中で「邪馬台国」とはどこにあったのか、卑弥呼という王はどんな人物だったのかについて、様々な説があり、いまだ決着していません。日本側の文献や墳墓から、文字で記録されたものが残されていたら(出土したら)、ここまで多くの人に論じられ続けることもなかったでしょう。しかし出てこないのですから、結局は確定できません。今も未決着のまま…

いやしかし。

少々無責任な言い方をしてしまいますが、その決定打が出ないというのが、スパイスなのかもしれませんね。やっぱりこちらなのか?いや、しかしこんな遺跡が出ているんだから、そちらなのではないか…と想像したり、誰かと討論するのが、また楽しい。ロマンですね。

これまでにも、様々なご著書で邪馬台国について触れてこられましたが、今現在の先生が「邪馬台国」をどう考えているのかを、改めて知りたい!と言うのが、本企画の出発点でした。

そして、「はじめに」からちょっとだけ引用――

「そこで、新たな仮説を用意しようと思う。それは倭国の女王・卑弥呼は、魏の使者の邪馬台国(邪馬台国はあくまでも”倭国の女王が住むところ”だ)訪問を、嫌っていたのではないか、というものだ。あらゆる手段を講じて、妨害しようとしていたのではないか……。北部九州の邪馬台国は偽物で、本当の「ヤマト」は、畿内にあった。」

――えええ?どういうこと??

そう思った方も多いのではないかと思いますが、ぜひお手に取ってみてください。いろいろな意見があって当然の「邪馬台国論」ですが、本書を読んでいただくと、先生の”新邪馬台国論”に頷いてしまうのと同時に、「ヤマト建国」についても、新しいイメージが湧き上がってくるのではないかと思います。つくづくこの二つのテーマは、不可分なのですね。ぜひ本書を参考に、自分の中の「邪馬台国」像を、バージョンアップしてみてください!

(むとう)