「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第14回「陣馬街道 その二」掲載!

武田信玄の末娘・松姫さんこと、現在出家して信松尼(しんしょうに)さんが主役を務める「疾風に折れぬ花あり」。

前号で、信松尼さんを経済的に援助してくれていた北条氏照(うじてる)が城主を務める八王子城が、落城。殲滅、つまり皆殺しにされてしまいました。

そして、今号ではいよいよ、本拠地小田原城は、あまりに巨大な秀吉軍によって包囲されて、当主・氏直は降伏、北条家は滅亡してしまいます。
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武田家のお姫様であった信松尼さんにとって、北条家は縁戚であり、また、八王子に移ってからは、経済援助をしてくれた大切な人たちでした。

それが、あっけなく滅亡してしまった……。心情的悲しさだけでなく、現実的な危機でもあります。今や援助の道は絶たれてしまいました。幼い姪たち3人だけでなく、彼女たちを慕って仕えている家臣たちを養わなくてはならないのです。

いよいよ「自立」の道を確立しなければならなくなったわけです。そこで、信松尼さんが思いついたのは「機織り」でした。つまり養蚕、絹を生産すること、です。

古代から、信松尼さんが住む八王子がある武蔵国(今の東京都・埼玉県一帯)や上野国(群馬県)は、絹の名産地でした。そのため、彼女がそういう風に思いついたのはとても自然なことでした。

今でも上州(群馬県)名物として、「かかあ天下とからっ風」なんて言います。

これは、上州の女性は働き者で強いということなんですけど、女性が養蚕をしていたので、女性のほうが収入が大きくあったことで、経済的自立をしていたので、強いというわけなんですね。

そして、この「養蚕」ですが、これまた古来より女性の仕事と考えられていました。

蚕を育て、糸をとり、機を織る、という仕事は、手先の細やかな女性のほうが向いていたのかもしれませんね。この大変な作業の果てに生み出される「絹」は大変高価なもので、これを生み出すことができるというのは、相当な経済力を持っているということ。家庭内でも大きな権力になったろうと思います。

そんなわけで、目の付け所はすごくよさそうなんですが、果たしてうまくいくのか否か…。

歴史小説、というとらえ方でなく、現代に引き寄せてみると、信松尼さんはまさにベンチャー起業家ともいえるかもしれませんね。

詳しくはぜひ本誌をご覧くださいませ!

(むとう)