「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第十二回「お身代わり その二」掲載!!


お盆の時期、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私が住んでいる地域は、お盆は7月なので、ごくごく普通の週末を過ごしています。

改めて大人になってふと考えてみると、お盆というのは、いい習慣ですよね。年に一度、祖先が子孫のもとに還ってくる……。 本来は盂蘭盆会(うらぼんえ)、仏教的行事ですが、その由来や意味をよく知らなくても、「おばあちゃんが帰ってくるよ」なんて子供のころから言われて、仏壇の前で手を合わせて来た人が多いのではないでしょうか。

そして、少し思い出話をしたり、知らない大叔母の話を聞いたり、めったに会えない親族にあって近況を報告したりする。

自分がここにいる少し前の小さい「歴史」を、いろんな軸で実感するようなとき、ともいえるかもしれないですね。

さてさて。そんなわけで。

早いものでもう一月が経ちました。

お手伝いさせていただいてます中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」が掲載されております『文蔵』9月号が発売されておりますよ~! 20140817

武田信玄の末娘、松姫が主人公の、本作。

戦国時代だから仕方ない、のかもしれませんが、それにしても物語が始まってからずっと畳みかけるように押し寄せる、怒涛のような不幸の連続には、息つく間もありません。

繁栄を極めた武田家ですが、信玄が急死してから一気に滅びの道をひた走ります。

そして瞬く間に織田家に滅ぼされてしまった甲州武田家。松姫さんはまだ21歳ですが、兄たちから「生き延びて武田家の血を残してくれ」と、幼い姫たちを託され、隣の武蔵国へ逃げ落ちました。そして死んでいった武田家の人々を弔いたいと出家し、「信松尼」と名乗るようになりました。

信松尼さんの望みは、仏道に勤しむことで、死んでしまった親兄弟、そして祖先を弔い、あの世でちゃんと成仏させてあげること。言い方間違ってるかもしれませんけど、あるい意味「ひとり盂蘭盆会」です。そして、もう一つの願いは、手元に残された姪たちを無事に育て上げること……

しかし、この細やかな願いも、血筋もとっておきで美女である松姫さんです。なかなか世間がほっといてくれない。

そして、問題の徳川家康さん(女好き)が登場。

前回では、女狩りをして、武田家の家臣だった人物の未亡人だけでは飽き足らず、ついに松姫さんの存在に気付き、追っ手を差し向けてきました。

それに気付いた松姫さんの侍女・お竹さんは身代わりを志願、武田家ゆかりの女性という触れ込みで、家康さんの側室になりました。

これでもう大丈夫かな、と思いきや、そうは問屋が卸さない。

やはり、本当のお姫さまである松姫さんを落としたいわけです。「武田家と徳川家の血筋を兼ね備えた子供が欲しい」という建前がありますけど、正直、それは本当に建前ですよ。ねえ。

そして、またもや使者が訪れます。今度は直球に聞いてきます。「ここにおわすは、信玄公の五女、松姫さまではないのか」と。

ここで、腹を決める家臣一団。自分たちが仕えているのは松姫さんであることを認め、ある思い切った「大ウソ」をつくのですが…

まさに、捨て身の大ウソ、いや奇策です。その奇策とはいったい~!??

…ぜひ、誌面でご確認してくださいまし!

(むとう)

命の気高さ――保護された犬たちの美しいポートレート集『SHELTER dogs』/トレア・スコット著(山と溪谷社)




昨日、入魂の一冊が無事に予定通り責了できたので、今日はお仕事は休んで部屋の掃除。本棚を整理していましたら、久しぶりにこの本が目にとまりました。

20140816サラリーマン時代に担当した写真集『SHELTER dogs』です。思い出深い大好きな一冊!!

2009年発行なので、もう5年前になりますか~。
月日が経つのは本当に早いですね。

さて、この写真集は、アメリカのシェルター(保護施設)に収容された犬たちのポートレート集です。

著者のトレア・スコットさんはファッション誌出身の写真家。

動物が大好きで、たまたまシェルターを訪れて、多くのシェルタードッグたちと出会います。犬を引き取るだけではなく、ネットや記録に載せるための写真撮影もうけおうようになり、里親に出会って自由になる幸運な子たちだけではなく、次々と安楽死させられてしまう現実を前に、「イヌたちの本当の姿を映すポートレート集を撮ろうと決めた」(P90より引用)といいます。

彼女の言う「本当の姿」とは、哀れな、絶望している姿ではなく、それぞれの犬が本来持っている個性のことで、もっと言えば「魂の輝き」「存在の確かさ」のこと。

「私にとって、これ以上シンプルで本当のポートレート集はない。やることはほとんどない。なぜなら、私の被写体はすでに美しく、生きる力に溢れ、アップ写真がとれる準備ができているのだから」(P90)

実際のところ、彼女の言う通りの素晴らしい写真がずらりと並びます。
気高く美しいイヌが56匹。

もともとこの企画は、愛すべきボス・Kさんの企画で、引き継がせていただいて一緒に作った一冊なのですが、初めてこの写真集(すでにアメリカで出版されたもの)をKさんから見せていただいた時、大袈裟な表現でなく、瞬きをするのも思わず忘れて見入ってしまったことを覚えています。

写真集というのは、商売として考えると大変困難な道なのですが、しかし、これは出さなくてはいけない本だ、と思いました。Kさんもそういう思いで企画を通されたと思います。

とにかく写真が素晴らしい。

この素晴らしさをより魅力的にすべく、日本の印刷技術のお家芸、とでもいうべき素晴らしい表現力で、もっといいものにもっていこう、とKさんと相談。

取り寄せたデータは、印刷された状態から想像していた通り、かなり青い方向に寄っていたし、ものによって方向性にばらつきがあったので、スコット氏の代理者に確認してより温かい色味、美しい毛並みを表現できるように調整させていただくようにしました。

私たちがもっとも気にしたのは、スコット氏のことばにある「憐れみを誘うような」存在なのではなく、見た人が「虐待された生きものたちに美しい魂が宿っていることに気付く」写真である、という点。

寂しそうな、悲しそうな、そういう写真ではないということ、それを表現したいと考えたのですね。

そこで、Kさんだけでなく、大先輩で師匠と仰ぐEさんにみていただきながら、作り上げていきました。

今改めてみてみると、自分で言うのもなんですけど、この写真集、やっぱいい!!

写真やテーマ性がいいのはもういうまでもありませんが、写真集表現としての状態もかなりいい!!
白表現、毛の質感、温かく気高い感じがよく出てます。また黒部分もいい。奥行きのあるいい黒。いうなれば温かい黒です。

KさんとEさんという、偉大な先輩がいっしょにやってくださったからこそ出来たことではありますが、この本にかかわった自分を褒めてあげたくなりましたよ。

最後に、印刷立ち合いをした時のこと。一緒に来てくださったEさんが、ニコッと微笑んで、

「むとうは本当にいい経験をした。こういう写真集をつくれるというのは幸運なことだよ。いつかこの写真集を作ったことを誇りに思うと思うよ」

そう言っておられたのを思い出します。

本当に、おっしゃる通りです。

何度見ても、感動できる写真集にかかわれた私は幸運者だなあ。そしてお仕事振ってくださった元ボスKさん、師匠Eさんに改めて心からの感謝申し上げたいと思います。

本書は、日本の現状もお伝えしたいと思い、短くではありますが、日本の保護施設がどうなっているか、保護された犬や猫はどういうシステムにのせられてしまうのか、そういうことも取材して補足しています。

ぜひ、お手に取ってみてください!

(むとう)